廃旅館の解体費を補助|観光庁「廃屋撤去・再生による地方温泉地等のまちづくり支援事業」を解説

2026年7月1日より、事業者向けの公募(本公募)が開始されました。 詳細な公募要領や申請手続きについては、廃屋撤去・再生による地方温泉地等のまちづくり支援事業 公式サイトをご確認ください。 (更新日:2026年7月2日)

地方の温泉街では、かつて団体旅行向けに建てられた大型旅館が廃業し、そのまま廃墟化しているケースが少なくありません。

本来であれば、現在の旅行需要に合わせて小規模・高付加価値型の宿泊施設へ転換することで事業性が見込める立地であっても、「解体・減築費用が過大」という理由から再生が進まない――これは多くの温泉地が抱える共通課題です。

こうしたボトルネックに対応するため、観光庁は令和8年度(2026年度)から新たに 「廃屋撤去・再生による地方温泉地等のまちづくり支援事業」を創設しました。

本コラムでは、この新制度の概要と、どのような事業者・自治体にとってチャンスとなるのかを解説します。

なぜ今「廃旅館の撤去・再生」が必要なのか

現在の観光需要は、団体旅行中心から

  • 個人旅行
  • 少人数
  • 長期滞在・高付加価値 へと大きく変化しています。

しかし、温泉街の中心地には過去の需要構造に合わせて建てられた大型・堅牢な旅館建築が残り、これが再投資の大きな障壁となってきました。

観光庁は、この「建物が大きすぎること自体が再生を妨げている」という構造問題に着目し、 解体・減築という初期段階から支援する新制度を打ち出した点が、本事業の最大の特徴です。

観光庁「廃屋撤去・再生による地方温泉地等のまちづくり支援事業」とは

地方の温泉街などの中心部に放置され、景観や安全性の悪化を招いている大規模な「廃旅館・廃屋」の撤去や減築(ダウンスケール)を国が直接後押しする支援事業です。

これまで多額の解体費用がネックとなって進まなかった温泉街の再編・再生を初期段階から支援し、新たな宿泊施設や観光施設等への再生、エリア全体の活性化につなげることを目的としています。

補助対象

本事業では、単なる建物の解体にとどまらず、「撤去後の再生」や「エリア全体の活性化」を見据えた取組が対象となります。

  • ① 温泉街中心地における廃旅館等の撤去・減築
    • かつて団体客向けだったような大規模・堅牢な廃旅館などの解体、あるいは規模を縮小するための減築費用。
    • 条件:撤去・減築した跡地や建物が、最終的に宿泊施設等(高付加価値な宿など)として活用・再生されることが前提となります。
  • ② 相乗効果を生む周辺取組(関連事業)
    • 廃屋再生にあわせて行われる、まちのにぎわい創出や観光誘客に資する周辺の観光施設整備などの関連事業。

重要な要件:エリア再生計画の策定 個別の宿単体での申請ではなく、市町村等による「新たな旅館等を含んだエリア再生計画」の策定と、それに基づく連携事業であることが求められます。

補助率・補助上限額(最大6億円)

本事業の補助は、計画策定を支援する「1次支援」と、実際の撤去や周辺事業を支援する「2次支援」の2段階に分かれており、合計で最大6億円の大型補助を受けられます。

それぞれの具体的な補助率と上限額は以下の通りです。

支援 支援対象 補助率 補助上限
1次 ・エリア再生計画策定費
・廃屋の構造調査費 等
2/3 合計6億円
・うち周辺事業の上限(延べ床面積)
  3,000㎡未満:1億円
  5,000㎡未満:2億円
  5,000㎡以上:3億円
2次 ・廃屋の撤去・減築費 2/3 (※1次支援との合計で最大6億円。周辺事業の上限額は上記1次欄に記載の通り床面積に応じて適用されます)
・コア周辺事業(補助総額の上限1億円) 2/3
・周辺事業 上記以外 1/2

※「地方公共団体によって廃屋の撤去等が既に行われている土地」を対象とする場合には、廃屋の撤去・減築費は補助対象外。

2次支援の「周辺事業」のうち、特にエリア再生の核となる「コア周辺事業」に指定された取組については、補助率が 2/3(上限1億円) へと引き上げられます。

すでに地方公共団体によって廃屋の撤去等が行われている土地を対象とする場合、②③の「周辺事業」のみが対象となり、廃屋の撤去・減築費は対象外となります。

公募スケジュールと事業期間

2026年7月1日(水)より、本事業の「1次支援(エリア再生計画の策定等への補助)」に関する事業者向けの公募が正式に開始されました。

最新の公募スケジュールおよび事業期間は以下の通りです。

  • 公募開始(申請受付開始) 2026年(令和8年)7月1日(水) 12:00〜
  • 受付締切 2027年(令和9年)2月26日(金) 12:00まで
  • 事業期間(事業実施期間) 採択された事業の実施期間は、2028年(令和10年)3月末までを予定しています。

本公募は、「申請があったものから随時、審査・採択を行う」方式がとられています。 最終的な受付締切は2027年2月26日となっていますが、予算の上限に達した時点で受付が終了する可能性があるため、要件を満たす見込みのある事業者・自治体は、できるだけ早期に申請手続きを進めることを強くおすすめします。

補助対象となる取組

本事業では、単なる建替えではなく、再生を前提とした撤去・減築が補助対象となります。

① 温泉街中心地における廃旅館等の撤去・減築

  • 対象:廃旅館などの堅牢な建築物
  • 条件:再生後は宿泊施設として供されること

ポイント

  • フル解体だけでなく「減築」も対象
  • 小規模旅館・ブティックホテルへの転換を想定

② 相乗効果を生む周辺取組

①と併せて行う以下のような取組も対象となります。

  • 周辺の廃屋撤去・減築
  • 観光施設としての跡地活用

※撤去後は観光施設に供されることが条件です。

事業のポイント|宿単体ではなくエリア再生が前提

本事業では、市町村等による 「新たな旅館等を含んだエリア再生計画」の策定が要件とされています。

計画には、例えば以下の内容が求められます。

  • 地域の将来像と観光のあり方
  • 観光客数・滞在日数などの具体的指標
  • 廃屋跡地の利用指針
  • 減築後・再生後の施設活用方針

つまり、「1軒の宿を再生する」だけではなく、 「温泉街全体のにぎわいをどう取り戻すか」という視点が不可欠な制度です

この補助金を活用できる事業者・自治体

特に相性が良いのは、次のようなケースです。

一方で、単独事業・短期収益のみを目的とした計画では、制度趣旨との整合が求められる点には注意が必要です。

宿泊事業者以外の向いている事業者は?

本事業は、補助対象が「宿泊施設の再生」に設定されているため、 一見すると宿泊事業者向けの制度に見えます。

しかし実際には、廃旅館の撤去・減築という高額かつ初期リスクの高い工程が含まれること、 さらにエリア再生計画の策定が要件とされていることから、 関係する事業者は宿泊事業者に限られません。

特に、次のような関係者が関わることで、事業として成立しやすくなる制度といえます。

このような不動産・開発事業者は、直接補助を受ける主体というよりも

  • 廃旅館・廃屋の取得・権利調整
  • 解体・減築を含めた再生スキームの構築
  • 宿泊事業者や自治体と連携した事業化の支援

といった形で関与するケースが想定されます。

特に、事業性自体は見込めるものの、 「解体費がネックで誰も手を出せなかった物件」においては、 補助制度を前提に再生可能性を整理する役割として、 不動産・デベロッパーの関与余地は大きいといえるでしょう。

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よくある質問

Q1. 廃墟旅館再生まちづくり支援事業とは何ですか?

A. 廃業した旅館やホテルなどの遊休施設を活用し、温泉街や観光地の再生を目指す取り組みを支援する制度です。地域全体の魅力向上や観光客の増加、空き施設の有効活用を目的としています。

Q2. 廃墟旅館を解体する費用も補助対象になりますか?

A. はい、最終的に宿泊施設や観光施設等として再生・活用されることを前提に、廃旅館等の撤去・減築費用が補助対象(補助率2/3)となります。詳細な対象経費の条件は公募要領をご確認ください。

Q3. 誰が申請できますか?

A. 地方自治体、観光地域づくり法人(DMO)、まちづくり会社、地域協議会、民間事業者などが対象となる場合があります。公募ごとに対象者が異なるため、最新の募集要領を確認することが重要です。

Q4. 温泉街再生のために活用できる補助金はこの制度以外にもありますか?

A. はい。観光庁の補助事業のほか、地方創生関連補助金、ローカル10,000プロジェクト、各自治体独自の支援制度などを活用できる場合があります。事業内容に応じて最適な制度を選ぶことが大切です。

Q5. 廃墟旅館の再生で重視されるポイントは何ですか?

A. 単なる施設改修ではなく、地域全体の活性化につながる計画であることが重要です。観光客の増加、地域経済への波及効果、空き施設の有効活用、持続可能な運営体制などが評価される傾向があります。

Q6. 補助金申請にはどのような準備が必要ですか?

A. 事業計画書の作成、資金計画の整理、地域関係者との連携体制の構築、収支シミュレーションなどが必要になります。特に観光振興や地域活性化への効果を具体的に示すことが重要です。

Q7. 廃墟旅館を宿泊施設以外に活用する場合も対象になりますか?

A. 制度によっては対象となります。コワーキングスペース、地域交流施設、飲食施設、観光拠点施設などへの転用が認められる場合もあります。公募要領で対象事業を確認しましょう。

Q8. 行政書士に相談するメリットはありますか?

A. 補助金申請では事業計画書の作成や公募要領の読み込みが重要です。行政書士などの専門家に相談することで、要件確認や申請書類作成の負担軽減につながります。

まとめ

「廃屋撤去・再生による地方温泉地等のまちづくり支援事業」は、

  • 解体・減築というこれまで支援されにくかった工程を正面から支援
  • 宿泊施設再生を起点とした温泉街全体の再構築を促す

という点で、これまでにない性格の補助事業です。

廃旅館が負の遺産として残るのか、 次の観光需要を生む再生の起点になるのか。

2026年度以降、温泉地再生を検討する地域にとって、 早期の情報整理と計画づくりが重要になりそうです。

温泉街の再生・廃屋撤去でお悩みの事業者・自治体様へ

観光庁の「廃屋撤去・再生による地方温泉地等のまちづくり支援事業」は、最大6億円という非常に手厚い補助を受けられる絶好のチャンスです。

しかし、本補助金は「申請順に随時審査され、予算上限に達し次第、受付終了」となるため、何よりもスピードと正確性が求められます。また、申請には地方公共団体を巻き込んだ「エリア再生計画協議会」の設立合意など、高度な調整や書類準備が必要です。

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