2025年度補正予算案が閣議決定:物価高対策・中小企業支援・コンテンツ産業支援のポイントを解説

2025年11月28日、政府は令和7年度(2025年度)補正予算案を閣議決定しました。

今回の補正は、物価高の長期化や経済安全保障への対応を背景に、家計支援から中小企業の成長投資コンテンツ産業の海外展開支援まで幅広い分野に重点が置かれています。エネルギー価格対策賃上げ促進サプライチェーンの強化など、企業経営に直接かかわる要素も多く、年度末から来年度に向けた事業計画にも影響を与える内容となっています。

本コラムでは、補正予算案の主要ポイントをわかりやすく整理します。

今回の補正予算案の全体像

今回の補正予算案で、経済産業省が計上した関連予算の総額は 2兆7,000億円
内容は大きく以下の4つに分類されます。

短期的な負担軽減だけでなく、中長期的な成長投資がセットになっている点が特徴的です。

電気・ガス料金補助の強化:家計負担を追加緩和

物価高対策の柱となるのが、約 5,296億円 を計上した電気・ガス料金補助です。
2026年1月から3カ月間、家庭向けの負担が軽減され、平均的な1世帯あたり約 7,300円 の軽減が見込まれます。今夏の約3,000円と比較すると、今回はかなりの拡充です。

エネルギー価格の高止まりによる生活コスト増を抑えることで、家計の消費マインドの低下を防ぐ狙いがあります。

中小企業支援:賃上げと生産性向上をセットで押し上げ

中小企業向けの施策では、以下のような支援が中心です。

  • 人手不足に対応した 省力化投資・自動化投資への補助
  • 生産性向上のための設備投資支援
  • 賃上げの実現に向けた補助制度の整備

「賃上げしたくても原資がない」という現実に対し、投資と賃上げを連動させる政策が引き続き重視されています。

補正予算により、年明け以降に新たな補助金が創設される可能性も高く、2026年度の支援制度にも影響していく見通しです。

今回の補正には、短期的な物価高対策に加えて、中小企業の経営基盤を立て直すための制度も盛り込まれています。

認定支援機関による「経営改善計画策定支援補助金」(101億円)

財務面の課題を抱える中小企業が、
自力で経営改善計画をつくることが難しいケースに対応するための制度です。

  • 認定経営革新等支援機関(税理士・金融機関など)が策定を伴走
  • 計画策定費用の一部を補助
  • 危機に陥る前の早期段階で簡易な改善計画をつくる支援も対象

経営改善をスムーズに進めることで、企業の収益力強化につなげることが狙いです。

生産性向上と賃上げの実現を図るため、大規模な設備投資を後押しする制度も新たに盛り込まれています。

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中堅等大規模成長投資補助金(4,121億円)

人手不足への対応と、持続的な賃上げを実現するための「大規模投資」を支援する補助金です。

  • 省力化・自動化による生産性向上を目的とした工場新設などを補助
  • 基金として2,000億円を確保
  • 100億宣言企業向けに1,000億円程度を確保
  • 経営人材の受入れに対する給付金(転籍・副業・出向)も併設

地方企業の賃上げと事業規模の拡大を同時に後押しする構成となっています。

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経済安全保障・先端技術関連の投資を拡大

重要物資の調達先拡大やサプライチェーン強靭化、先端技術への投資も重要な柱です。

具体的には、

  • 半導体
  • AI・量子
  • エネルギー安全保障
    など、世界的に競争が激化する分野への対応が求められています。

国内外のリスク分散のため、資源・エネルギー、重要部素材などの供給網強化は、企業にとっても中長期で重要なテーマです。

成長分野を支える施策として、スタートアップの海外展開支援も大きく取り上げられました。

グローバル・スタートアップ創出支援事業(46億円)

海外投資家からの資金調達や、海外市場での成長を目指すスタートアップを支援する制度です。

主な取り組みは次のとおりです。

  • 大学生・若手起業家の海外派遣によるグローバル戦略育成
  • 成長したスタートアップに対するメンタリング
  • 海外投資家への個別紹介
  • 国内イベントに海外トップ投資家を招聘し、資金調達の成功事例づくり

令和5〜8年度を通じて、海外進出の成功180件 を目標としています。

参考コラム

スタートアップ支援の最新動向:海外投資を呼び込む新ルールと主な施策

コンテンツ産業支援:350億円で海外展開を後押し

今回の補正では、アニメや漫画、ゲームなど コンテンツ産業の支援に約350億円 が計上された点も注目されます。

支援内容は以下の通りです。

  • 大規模映像作品の制作支援
  • 海外向け配信サービスの流通基盤整備
  • 基金を活用した 複数年支援

日本のコンテンツ産業は国際的な競争力が高く、海外展開を後押しすることで経済効果を高めていく狙いがあります。

企業にとっての影響:2026年に向けた準備が有利に

今回の補正予算は、短期・中期の双方から企業活動に影響する内容です。

● エネルギーコストの軽減
冬場の電力・ガスコストの低減につながる可能性。

● 新規補助金の創設可能性
省力化投資、デジタル化投資を検討している企業には追い風。

● 成長分野への投資強化
サプライチェーン対策や先端技術投資は、企業戦略にも影響。

年度末から新年度にかけて、事業計画の見直しや投資計画の整理を行うと、支援制度を活用しやすくなります。

まとめ:短期×長期の政策を組み合わせた補正予算

今回の補正予算案は、

  • 物価高対策による 短期の家計負担軽減 と、
  • 成長投資・経済安全保障による 中長期の構造強化

を同時に進める内容となっています。

中小企業にとっては、省力化投資・自動化投資などに追い風が吹く可能性が高く、早めの情報収集と計画準備が重要です。

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