2027年度の補助金はどうなる?概算要求から見える「成長投資」への転換

2027年度(令和9年度)の補助金制度は、これからどのように変わっていくのでしょうか。

2026年8月31日、経済産業省から「令和9年度 中小企業・小規模事業者関係 概算要求等ポイント」が公表されました。

今回の資料を見ると、来年度の中小企業支援では、「稼ぐ力」の強化、「成長投資」、「賃上げ」、「省力化・AI・DX」などが重要なテーマとして位置づけられていることが分かります。一方で、今回公表されたのはあくまで「概算要求」であり、来年度の補助金の公募回数や補助率、補助上限、具体的な申請要件などがすべて決まったわけではありません。

では、今回の資料から、企業は何を読み取ればよいのでしょうか。

本コラムでは、2027年度の補助金を考えるうえで特に注目したい制度に絞って、今後の方向性を解説します。

2027年度の補助金は「成長投資」が大きなテーマに

概算要求とは何か

概算要求とは、各省庁が翌年度の予算について財務省に要求する段階の資料であり、いわば「政府の希望リスト」にあたります。毎年8月末に公表されるのが通例で、この後、年末にかけて財務省との折衝を経て、12月の予算編成過程で内容が固まっていきます。

そのため、今回公表された内容がそのまま来年度の制度になるとは限りません。補助率や補助上限、申請要件、公募回数といった実務上重要な部分は、年末の予算編成やその後の公募要領の公表を待つ必要があります。

ただし政府の方向性は見えてきた

とはいえ、概算要求は「省庁がどこに重点を置きたいか」を示す資料でもあります。今回の資料からは、中小企業・小規模事業者関係の予算として1兆3,841億円が計上されており、「稼ぐ力」の強化と賃上げの好循環の実現、そして地方発のAX(AIトランスフォーメーション)推進が柱として掲げられていることが読み取れます。

資料の基本的な課題認識として、100億円宣言企業や中堅企業、売上高1〜10億円の企業、小規模事業者、ローカル・ゼブラ企業に至るまで、幅広い層の事業者に対して段階的に支援を行う姿勢が示されている点も特徴です。

「稼ぐ力」「賃上げ」「成長投資」がキーワード

今回の概算要求全体を通じて繰り返し登場するのが、「稼ぐ力」「賃上げ」「成長投資」という3つのキーワードです。単に事業を維持するための支援ではなく、売上や賃金の水準を引き上げていく企業を後押しする方向性が明確になっています。

2027年度に注目したい5つの補助金

今回の資料で言及されている中小企業向け補助金のうち、特に事業規模の異なる企業ごとの「成長ステージ」に対応する形で整理されているのが、以下の5つの補助金です。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が経営計画を自ら策定し、商工会・商工会議所の支援を受けながら取り組む販路開拓等を支援する制度です。

今回の資料で注目したいのは、単なる現状維持ではなく、例えば「1億円を目指す」など売上規模の拡大を志向し、「成長志向の経営計画(仮称)」を宣言する事業者も対象に含まれている点です。小規模事業者向けの制度でありながら、成長志向の事業者を後押しする姿勢が明確に打ち出されています。

なお、この「成長志向の経営計画(仮称)」の宣言の仕組み自体は、小規模事業対策推進等事業(175億円)の枠組みの中で構築・運用されるとされています。

小規模事業者持続化補助金についてはこちらのコラムをご覧ください。
【小規模事業者持続化補助金】ウェブ制限撤廃でHP制作のチャンス!理由と活用法

新事業進出・ものづくり商業サービス補助事業

2,200億円が計上されているのが、新事業進出・ものづくり商業サービス補助事業です。中小企業等の革新的製品・サービス開発や、海外を含む新市場への進出等に係る設備投資等を支援する制度です。

この制度で特に重要なのが、「売上高10億円を目指す宣言を原則として要件化」という記載です。つまり、単に新事業に取り組むだけでなく、将来的に売上高10億円規模を目指す企業であることが、原則として申請の前提になる可能性があるということです。

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金についてはこちらをご覧ください。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは?統合の背景・公募時期・申請準備を解説

中小企業成長加速化補助金

中小企業成長加速化補助金は、賃上げへの貢献、輸出による外需獲得、域内の仕入による地域経済への波及効果が大きい、売上高100億円超を目指す中小企業の大胆な投資を支援する制度です。

新事業進出・ものづくり補助事業が「10億円」を一つの目安としているのに対し、こちらは「100億円超」を目指す、より成長段階の進んだ企業を対象としている点が違いです。なお、この制度は独立行政法人中小企業基盤整備機構運営費交付金(6,980億円)の内数として計上されており、小規模事業者持続化補助金や省力化・デジタル化・AI投資補助金などと同じ大きな予算の枠内に位置づけられています。

成長加速化補助金についてはこちらをご覧ください。
成長加速化補助金とは?売上100億円目指す企業の大型補助金

省力化・デジタル化・AI投資補助金

今回の資料で新たに登場した名称が、「省力化・デジタル化・AI投資補助金」です。人手不足や生産性向上等の課題を抱える中小企業・小規模事業者等を対象に、業務効率化やAX・DXの推進に向け、AIを含むデジタル技術の活用や省力化設備の導入を一体的に支援する、とされています。

「一体的に支援」という表現から、これまで「デジタル化・AI導入補助金」や「中小企業省力化投資補助金」などの枠組みで別々に運用されてきたデジタル化・AI導入や省力化投資に関する制度が、再編・統合される方向性にあることがうかがえます。

ただし、統合後に従来の各種枠組みがどのような申請類型や補助率、補助上限額に再編されるかといった詳細については、現時点の資料からは確認できません。この点は今後の公募要領等で明らかになり次第、あらためて確認が必要です。

省力化投資補助金についてはこちらをご覧ください。
省力化投資補助金(一般型)とは?|対象・補助額・申請の流れまとめ

デジタル化・AI導入補助金についてはこちらをご覧ください。
IT導入補助金は2026年度から「デジタル化・AI導入補助金」へ|名称変更で何が変わるのか

大規模成長投資補助金

「強く豊かな日本」投資枠の一覧(別紙2)には、「中堅・中小・スタートアップ企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金」として、約1,376億円(137,561,210千円)が計上されています。

名称や計上額の規模から、中堅・中小・スタートアップ企業による大規模な設備投資を支援する制度と位置づけられます。過去の制度等に鑑みると10億円規模以上の投資が想定されます。

大規模成長投資補助金についてはこちらをご覧ください。
最大50億円設備投資|大規模成長投資補助金を解説

5つの補助金はどう使い分ける?

ここまで紹介した5つの補助金は、バラバラに存在しているというよりも、企業の「成長ステージ」に応じて緩やかに棲み分けられているとイメージすると分かりやすくなります。

小規模事業者 販路開拓・経営計画 小規模事業者持続化補助金 販路開拓等を支援(成長志向も対象) 成長を目指す中小企業 新事業・新市場・設備投資 新事業進出・ものづくり補助事業 10億円を目指す宣言が要件 さらに成長を目指す中小企業 大型の成長投資 中小企業成長加速化補助金 100億円超を目指す投資 中堅・中小・スタートアップ 大型設備投資を行う 大規模成長投資補助金 10億円以上の大型投資 省力化・デジタル化・AI投資補助金 成長ステージに関わらず活用可能(横軸)

図の縦軸が小規模事業者から中堅・中小・スタートアップまでの成長ステージ、そして横軸に位置づけられるのが省力化・デジタル化・AI投資補助金です。成長ステージに関わらず活用可能な制度であり、省力化・AI・DXへの投資そのものを支援するものと考えることができます。

つまり、「自社が今どの成長ステージにあるか」で縦軸の制度を選び、「省力化やAI導入に取り組みたいか」で横軸の制度を検討する、という2軸で整理すると、5つの補助金の使い分けが見えやすくなります。

ただし、これはあくまで概算要求段階の資料から読み取れる大枠の方向性であり、実際の対象要件や補助率、申請区分は、年末の予算編成や公募要領の公表を待つ必要がある点にはご留意ください。

概算要求から公募開始までのタイムラインと「今」準備を始めるべき理由

補助金の検討において非常に重要なのが「タイムラインの把握」です。概算要求が発表されてから、実際に補助金を使えるようになる(公募が始まる)までには、以下のようなプロセスをたどります。

予算成立と公募開始のスケジュール感

  • 8月末概算要求(各省庁が希望する予算を提出)
  • 12月中旬〜下旬政府予算案の閣議決定(大枠の制度設計や予算額が確定)
  • 翌年1月〜3月頃通常国会での予算成立
  • 翌年3月〜4月以降公募要領の公開・受付開始(公募開始)

このように、8月末に概要が見えてから実際の公募開始までは約半年間のタイムラグがあります。

なぜ「公募が始まってから」では遅いのか?

多くの事業者が「公募要領が公表されてから準備を始めよう」と考えがちですが、これでは遅すぎるケースがほとんどです。

実際の公募期間は1ヶ月〜1ヶ月半程度と短く設定されることが多く、公募が始まってから「事業計画の策定」「数値計画の立案」「社内調整や見積書の取得」を始めようとしても、満足な品質の申請書を完成させる時間はまずありません。特に、売上高10億円や100億円を目指すような大型の成長投資や新事業への進出においては、経営方針に踏み込んだ緻密な事業計画が求められます。

だからこそ、概算要求が公表された「今(8月〜秋口)」のタイミングから、来年度の投資計画を可視化し、補助金の要件に合わせた事業構想を練り始めておくことが採択率を高める最大のポイントとなります。

補助金活用に関するご相談・事前準備サポート

麹町キャピタルマネジメントでは、概算要求段階での制度予測に基づいた事業計画の構想支援から、実際の申請サポートまで一貫してご相談を承っております。「自社がどの補助金の対象になりそうか」「今から何を準備しておくべきか」など、お気軽にお問い合わせください。

補助金とあわせて検討したい「設備投資の税制優遇制度」

設備投資を行う際は、補助金の獲得だけでなく税制上の優遇措置をセットで検討することが非常に重要です。事前に税制面の準備も進めておくことで、投資にかかる実質負担を大きく軽減できます。

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Q. 概算要求とは何ですか?もう内容は決まっているのですか?

概算要求は、各省庁が翌年度予算について財務省に要求する段階の資料であり、確定した予算ではありません。補助率や補助上限額、申請要件、公募回数といった詳細は、年末の予算編成や、その後公表される公募要領を待つ必要があります。

Q. 省力化投資補助金とデジタル化・AI導入補助金は統合されるのですか?

令和9年度の概算要求では「省力化・デジタル化・AI投資補助金」という名称で、省力化設備の導入とAIを含むデジタル技術の活用を一体的に支援する方針が示されています。ただし、統合後の申請類型や補助率、補助上限額といった詳細は、現時点の資料からは確認できていません。

Q. 自社はどの補助金を検討すればよいですか?

自社の売上規模や目指す成長ステージによって、対応する制度が異なります。小規模事業者であれば小規模事業者持続化補助金、10億円規模を目指すなら新事業進出・ものづくり補助事業、100億円超を目指すなら中小企業成長加速化補助金、大型設備投資を計画する中堅・中小・スタートアップであれば大規模成長投資補助金が候補になります。加えて、省力化やAI投資に取り組む場合は、成長ステージに関わらず省力化・デジタル化・AI投資補助金の活用も検討できます。

Q. 2027年度の補助金の詳細はいつ分かりますか?

例年の流れでは、年末にかけての予算編成を経て、来年度の公募要領は翌年度に入ってから順次公表されます。詳細が判明次第、本サイトでもあらためて解説します。

2027年度に向けて企業が今から準備すべきこと

制度の詳細が固まるのはまだ先ですが、方向性が見えてきた今だからこそ、以下のような点を整理しておくことには意味があります。

  • 自社は何を成長させたいのか(売上規模、事業領域、市場)
  • 売上をどう伸ばすのか(新事業・新市場・設備投資のいずれで伸ばすのか)
  • 人手不足をどう解消するのか(省力化投資の必要性)
  • AI・DXをどこに導入するのか(業務のどの部分に効果が見込めるか)
  • 設備投資によって何が変わるのか(生産性・供給能力への影響)
  • 賃上げにつなげられるか(投資の成果を賃金にどう還元するか)
  • 補助金とあわせて活用できる税制優遇の確認(投資効率の最大化)

補助金の細かな要件は今後の情報を待つ必要がありますが、上記のような自社の成長戦略の骨格が固まっていれば、公募要領が公表された際にスムーズに対応できます。今回の概算要求は、いわば「来年度、どの制度が自社に合いそうか」を早めに見極めるための材料と捉えるとよいでしょう。