在留カードとマイナンバーが一体化へ──外国人の在留資格管理はどう変わるのか

2026年6月から始まる「特定在留カード」の運用により、在留カードとマイナンバーカードの一体化が進む予定です

制度の目的は、外国人本人の利便性向上や行政手続きの効率化ですが、一方で、税・社会保険・在留資格管理の連携強化にも注目が集まっています。さらに、税務データ分析の高度化やデジタル行政の推進によって、外国人雇用企業や在留外国人に求められる管理体制も変化していく可能性があります。

本コラムでは、2026年の制度変更のポイントと、在留資格・税務・社会保険管理が今後どのように変わるのかを整理します

2026年6月スタートの「特定在留カード」とは?制度の概要とメリット

在留カードとマイナンバーカード機能の統合(申請ベースの任意取得)

特定在留カードは、現行の「在留カード」に「マイナンバーカード」の ICチップ機能を統合したものです。これは全在留外国人に自動付番・強制交付されるものではなく、本人の申請に基づいて発行される「任意」の制度です

行政手続きの一本化による利便性と、オンライン更新の効率化

特定在留カードを取得することで、これまで「出入国在留管理庁(入管)」と「市区町村(役所)」のそれぞれで行う必要があった住所変更や在留期間更新にともなう手続きが、ワンストップで完結できるようになります。外国人本人にとっては利便性が向上し、各種行政手続きにかかる時間とコストが大幅に削減されます。

なぜ日本はデジタル統合を進めるのか?縦割り行政から「情報の一元管理」へ

外国人労働者の急増と行政コスト削減・不正防止の必要性

背景にあるのは、在留外国人の急増にともなう行政のキャパシティ問題です。これまでは、入管が管理する「在留資格情報」と、自治体や国税庁、日本年金機構が管理する「税・社会保険情報」が分断されており、それぞれの行政機関が個別に確認を行う必要がありました。

情報を「分断管理」できなくなった行政のデジタルシフト

行政側が情報を分断管理できなくなったという構造変化が、今回の統合の本質です。マイナンバーを介したデータの一元管理化が進むことで、意図的な不法就労や、不資格者による制度の悪用などの「不正防止」がリアルタイムかつ効率的に行える環境が整いつつあります

外国人雇用企業への影響は?「雇用管理」と「在留管理」の連動リスク

法就労リスクの可視化とマイナンバー管理の徹底

企業の実務において、今回の制度統合は大きな意味を持ちます。ハローワークへの「外国人雇用状況届出」や税務申告、社会保険の加入状況がマイナンバーを通じて横断的に確認できるようになるため、企業側の「管理漏れ」が即座に発覚するリスクが高まります

在留期限・社会保険・税務処理を切り離せない「一体型マネジメント」へ

「雇用管理」と「在留管理」は完全に切り離せないものになります。例えば、週28時間以内の制限がある「家族滞在」や「留学」の資格を持つ外国人が、複数の企業でダブルワークをしてオーバーワーク(資格外活動違反)となっている場合、これまでは発覚が遅れる傾向にありましたが、今後は給与支払報告書とマイナンバーの連携により容易に検知されます。企業は、自社が意図せず不法就労助長罪に問われないよう、より厳格な本人確認と労務管理を求められます

AI分析・データ連携時代に激変する「税務」と「在留資格更新」

次世代国税システム「KSK2」の整備と税務データ分析の高度化

国税庁では、税務行政のデジタル化(税務DX)の基盤として、次世代国税総合管理システム「KSK2」の整備を進めています。従来のシステムから全面的な刷新が進む背景には、AIなどを活用した税務データの高度な分析や、国際的な税務情報交換への対応強化があります

これにより、従来は見えにくかった在留外国人の「海外資産情報」や「不自然な海外送金」、CRS(共通報告基準)に基づく金融口座情報などの把握精度がさらに向上していくとみられます。

KSK2を解説したコラム

KSK2の概要や導入の背景については、過去コラム「国税庁『KSK2』とは?次世代国税システムと税務調査デジタル化の背景」でも詳しく解説しています、

税・社会保険料の未納や「資産の隠蔽・虚偽申告」による在留許可取消リスク

今後は、こうした高度化された税務データと、在留管理・社会保険データとの横断的な確認(データ連携)が進む可能性があります。政府の厳格化方針に伴い、税金や社会保険料の未納・滞納がある場合、在留資格の更新が拒否される事例が増加傾向にあります。

さらに、意図的な海外資産の隠蔽や税務上の虚偽申告が「不正の行為」とみなされた場合、最悪のケースとして在留許可そのものが取り消される法的リスクもはらんでいます

デジタル化の本質は「利便性向上」と「厳格化(透明性)」の同時進行

手続きのオンライン化・簡素化がもたらすメリット

重要なのは、この制度変更を単なる「外国人への監視強化」と捉えるべきではないという点です。オンライン化の推進によって、ルールを正しく守っている外国人やホワイト企業にとっては、行政手続きが圧倒的にスムーズになるという大きなメリットを享受できます。

未納・虚偽申告を許さない「透明性の高い社会」への適応

デジタル化の本質とは、「利便性」と「透明性」がトレードオフではなく、セットで同時に進むことです。データが可視化されることで、未納や虚偽申告、情報の不一致に対するチェックは自動的かつ厳格になります。感情的な是非論ではなく、「適正な手続きを行っている者が報われ、不適正な者が是正される透明な仕組み」への移行として捉えるべきです。

まとめ

2026年の特定在留カードの運用開始と税務・労務データの高度な連携は、日本で生きる外国人、彼らを雇用する企業、そして手続きをサポートする士業(行政書士・税理士・社労士)のすべてに影響を与えるパラダイムシフトです。

企業は「任意制度だから関係ない」と静観するのではなく、これを機に自社の外国人労務管理(マイナンバー、社会保険加入、居住者・非居住者の税務区分など)に不備がないか、今一度リーガルチェックを行っておくことが、将来的な経営リスクを回避する最善の防衛策となります