【2026年度】令和8年度 オーバーツーリズム対策補助金が公募開始― 観光地の面的受入環境整備促進事業の概要とポイント
2026年2月25日、観光庁は令和8年度「オーバーツーリズムの未然防止・抑制をはじめとする観光地の面的受入環境整備促進事業」の公募を開始しました。
訪日外国人客数の急増を背景に、一部地域や時間帯で観光客の過度な集中やマナー問題が顕在化する中、国は従来の局所的・短期的な対応から、地域全体で取り組む面的な受入環境整備へと政策の軸足を移しています。
本コラムでは、公募開始直後の情報をもとに、本事業の目的や支援内容、類型の違い、申請を検討する際のポイントを整理します。
- なぜ今「オーバーツーリズム対策」が求められているのか
- 観光地の「面的受入環境整備」とは何か
- 概要・スケジュール|令和8年度 オーバーツーリズムの未然防止・抑制をはじめとする観光地の面的受入環境整備促進事業
- 支援類型の違い|オーバーツーリズムの未然防止・抑制をはじめとする観光地の面的受入環境整備促進事業
- 主な要件と申請時に注意すべきポイント|オーバーツーリズムの未然防止・抑制をはじめとする観光地の面的受入環境整備促進事業
- 補助対象事業・補助対象経費の考え方と具体例|オーバーツーリズムの未然防止・抑制をはじめとする観光地の面的受入環境整備促進事業
- 事前着手届出制度と公募説明会の活用|オーバーツーリズムの未然防止・抑制をはじめとする観光地の面的受入環境整備促進事業
- まとめ|オーバーツーリズムの未然防止・抑制をはじめとする観光地の面的受入環境整備促進事業
なぜ今「オーバーツーリズム対策」が求められているのか
2025年以降、訪日外国人客数は急速に回復・拡大し、年間4,000万人規模に達しました。観光需要の拡大自体は歓迎すべき動きである一方、一部の地域や時間帯では、観光客の過度な集中による混雑、生活環境への影響、マナー違反といった課題が顕在化しています。
こうした状況は、単に観光地の問題にとどまらず、地域住民の生活の質や、観光そのものの持続可能性にも影響を及ぼします。国としても、インバウンドのさらなる拡大を進める以上、地域の理解を得ながら受入環境を整えることが不可欠であるとの認識を強めています。
関連コラム
なお、訪日客数の増加と政策転換の全体像についてはこちらのコラムで解説しています。
▶ 訪日客4000万人時代へ ― オーバーツーリズム対策から読み解く、次の観光政策|観光庁の補助金
観光地の「面的受入環境整備」とは何か
今回の事業で強調されている「面的受入環境整備」とは、特定の施設や場所に限定した対策ではなく、地域全体を一つの単位として、総合的に受入環境を整えていく考え方です。
これまでのオーバーツーリズム対策は、繁忙期の警備強化や注意喚起といった、局所的・短期的な対応が中心でした。しかし、それだけでは根本的な解決には至りにくく、課題が繰り返される傾向にありました。
本事業では、地域の関係者が連携し、中長期的な視点で課題を整理したうえで、複数の取組を組み合わせて実施することが想定されています。観光を「地域の戦略産業」として持続的に発展させるための基盤整備と言えるでしょう。
概要・スケジュール|令和8年度 オーバーツーリズムの未然防止・抑制をはじめとする観光地の面的受入環境整備促進事業
「オーバーツーリズムの未然防止・抑制をはじめとする観光地の面的受入環境整備促進事業」は、各地域が現在直面している、または今後生じ得る観光課題について、地域一体で行う取組を面的・総合的に支援することを目的としています。
なお、本事業は令和8年度政府予算の成立を前提として実施されるものであり、今後の動向によって制度内容が変更される可能性がある点には留意が必要です。
公募開始:2026 年2月25日(水)
計画申請受付締切:2026 年5月29日(金)
※事前着手届出制度を活用する場合:2026 年4月17日(金)
採択発表:2026 年 6月下旬
支援類型の違い|オーバーツーリズムの未然防止・抑制をはじめとする観光地の面的受入環境整備促進事業
本事業は、「地域一体型」と「一般型」の2つの類型に分けて公募されます。
地域一体型
地方公共団体や登録DMOが中心となり、地域の観光関連事業者等と連携しながら、面的な受入環境整備を行う類型です。協議の場を設け、地域住民の意見を取り入れる仕組みを持つことが求められます。比較的大きな規模の取組が想定されます。
補助率:2/3以内
補助上限額:2億円
一般型
複数の観光関連事業者等が連携し、各地域の実情に応じた受入環境整備を行う類型です。地方公共団体以外が申請主体となる場合でも、自治体との連携が必須となります。
補助率:1/2以内
補助上限額:5,000万円
主な要件と申請時に注意すべきポイント|オーバーツーリズムの未然防止・抑制をはじめとする観光地の面的受入環境整備促進事業
申請にあたっては、単に事業内容が優れているだけでなく、「地域としての合意形成」が重視されます。地域一体型では、協議の場の設置や、住民意見を反映させる方法をあらかじめ整えておく必要があります。
また、民間事業者が関わる場合であっても、自治体やDMOとの連携が前提となる点は共通しています。補助金申請を個別事業者の取り組みとして捉えるのではなく、地域全体の計画の一部として位置付ける視点が重要です。
補助対象事業・補助対象経費の考え方と具体例|オーバーツーリズムの未然防止・抑制をはじめとする観光地の面的受入環境整備促進事業
本事業では、オーバーツーリズムの未然防止・抑制や、観光地の受入環境を地域全体で整備するという目的に合致する取組が、補助対象事業として想定されています。特徴的なのは、ハード整備だけでなく、制度設計や調査、実証、住民との協議といったソフト面の経費も幅広く対象となっている点です。
あくまで例示であり、本事業の目的に合致する取組に係る経費が補助対象となります。
特定のスポットにおける過度な混雑への対応
特定の観光スポットに観光客が集中する場合には、入場規制や車両流入規制といった仕組みづくりが想定されています。
- 入場規制に関する制度設計費(調査費、地域における協議費用等)
- 事前予約システムの整備・導入に係るシステム開発費、導入費、実証運用費(導入初年度のみ)
など
観光客の混雑の時間的・地理的分散
混雑の集中を避けるため、デジタル技術や広域連携を活用した分散施策も補助対象とされています。
- デジタルマップ上での混雑情報リアルタイム発信に係る費用(ウェブサイト整備、混雑可視化等)
- 観光関連ウェブサイトでの混雑状況・混雑予測情報の発信費用
など
マナー違反行為(ごみ・無断立入等)への対策
観光客の増加に伴うマナー問題についても、ハード・ソフトの両面からの対策が想定されています。
- スマートごみ箱の整備・実証運用費(導入初年度のみ)
- ごみ持ち帰り啓発に係る取組
など
観光動線における受入環境不足への対応
訪日外国人旅行者を含む観光客の基礎的な受入環境整備も、重要な対象分野です。
- 観光情報の多言語化対応に係る経費
- 無料公衆無線Wi-Fiの整備費用
など
観光客の移動手段不足への対応
地域内移動の円滑化を目的とした取組も補助対象とされています。
- 観光客向けバス路線整備費(車両購入費、キャッシュレス端末整備、プロモーション費を含む)
- 観光客向けモビリティ導入費(車両購入、充電ポート整備等)
大型手荷物による課題への対応
手ぶら観光の推進に向けた取組も、本事業の重要なテーマの一つです。
- 手ぶら観光カウンターの整備・機能向上費
- 路線バス・鉄道における大型手荷物置き場の整備・改修費
現状把握・分析および制度検討に係る取組
- 人流把握・予測に係る調査分析費
- 新たな制度導入検討に伴う専門家意見聴取費
- 取組の効果検証費用
地域住民との協働に係る取組
地域との共生を重視する本事業では、住民参加型の取組も補助対象とされています。
- 協議の場開催に必要な経費(会場費等)
- 住民アンケート実施費用
など
事前着手届出制度と公募説明会の活用|オーバーツーリズムの未然防止・抑制をはじめとする観光地の面的受入環境整備促進事業
本事業では、一定の条件のもとで、交付決定前に事業に着手できる「事前着手届出制度」が用意されています。スケジュール上、早期に対応が必要な事業を検討している場合には、この制度の活用が選択肢となります。
また、公募開始にあわせてオンライン説明会も開催されます。制度の趣旨や過年度からの変更点、具体的な申請方法を把握するうえで、説明会への参加は有益です。申請を検討している場合は、早めに情報を整理することが重要です。
説明会概要
開催日時:2026年3月5日(木) 15:30~16:30(60分)
参加方法・申込期限:令和8年3月3日(火)17:00までに申込フォームにて※先着順:定員900名
申込フォームなど詳しくは、観光庁のページをご覧ください。 ▶ https://www.mlit.go.jp/kankocho/kobo08_00057.html
まとめ|オーバーツーリズムの未然防止・抑制をはじめとする観光地の面的受入環境整備促進事業
本事業は、オーバーツーリズムを「その場しのぎ」で対応するのではなく、地域全体で中長期的に向き合う姿勢を明確にした制度と言えます。訪日客数が今後も増加していく中で、観光政策は量の拡大から、受入環境の質や配置を重視する段階へと移行しています。
地域や事業者にとっては、国の方向性を踏まえたうえで、自らの取組をどのように位置付けるかが、今後ますます重要になっていくでしょう。

