東京都のゼロエミッション実現に向けた経営推進支援事業助成金とは?ハンズオン支援・申請条件・活用事例を解説
電気料金や燃料費の上昇に加え、取引先から環境への配慮やCO₂排出量の削減を求められるなど、中小企業にとって脱炭素への対応は重要な経営課題になっています。
東京都では、省エネ設備の導入などを支援するさまざまな助成金制度を実施しています。その一つが、「ゼロエミッション実現に向けた経営推進支援事業助成金」です。
この制度の特徴は、設備導入などにかかる費用の一部が助成されるだけでなく、専門家によるハンズオン支援を通じて、企業の脱炭素経営を中長期的にサポートする点にあります。
ただし、助成金を申請するには、東京都中小企業振興公社が実施するハンズオン支援を受け、戦略・ロードマップを策定していることが条件となります。
本コラムでは、助成金の概要や対象経費に加え、ハンズオン支援の受け方、実際の企業の活用事例について解説します。
ゼロエミッション実現に向けた経営推進支援事業助成金とは?
「ゼロエミッション実現に向けた経営推進支援事業助成金」は、東京都中小企業振興公社が実施する、中小企業等の脱炭素経営を支援する制度です。
ゼロエミッションとは、温室効果ガスなどの排出を実質ゼロにすることを目指す考え方です。企業においては、省エネ設備の導入や生産工程の見直し、再生可能エネルギーの活用など、さまざまな取り組みが考えられます。
本制度では、専門家による伴走型の支援を通じて脱炭素経営の戦略・ロードマップを策定し、その計画に基づいて実施する取り組みの費用の一部を助成します。
対象となる企業(申請できる方)
本助成金を利用できるのは、原則として都内に主たる事業所を有する中小企業者等であり、東京都中小企業振興公社が実施する「ハンズオン支援」を受けて脱炭素の戦略・ロードマップを策定した事業者です。
「何から取り組めばよいか分からない」という企業でも、事前のハンズオン支援を活用することで、自社に合った計画づくりからスタートすることができます。
2026年度(令和8年度)の助成金概要
令和8年度の主な制度内容は、次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 助成限度額 | 1,500万円 |
| 助成率 | 助成対象経費の2分の1以内 |
| 助成対象期間 | 交付決定日から最長1年6か月 ※ただしハンズオン支援期間終了日まで |
| 申請受付期間 | 2026年5月14日~2027年1月29日 |
| 主な申請条件 | ハンズオン支援を通じて戦略・ロードマップを策定していること |
※2026年10月時点の公表情報に基づきます。受付状況や詳細な要件については、東京都中小企業振興公社の公式案内をご確認ください。
どのような費用が助成対象になる?
本助成金は、省エネ設備の導入だけでなく、脱炭素の取り組みを社外に発信するためのPRや、人材育成に関する費用も対象になり得る点が特徴です。
主な対象経費の例は、次のとおりです。
| 区分 | 対象経費の例 |
|---|---|
| 省エネ設備の導入 | LED照明、高効率空調、高効率ボイラー、断熱窓、インバータ制御など |
| 運用改善 | デマンド監視装置、エネルギーマネジメントシステム(EMS)、人感センサーなど |
| 蓄電池 | 脱炭素の取り組みに必要な蓄電池の導入 |
| PR | ホームページ、動画、印刷物などの制作 |
| 人材育成 | 研修・講座の受講、資格取得など |
例えば、省エネ設備の導入によって光熱費の削減を目指すだけでなく、自社の環境配慮型製品や脱炭素の取り組みをホームページで発信し、販路拡大やブランド力向上につなげることも考えられます。
ただし、具体的な経費が助成対象となるかどうかは、募集要項や個別の事業計画に基づいて確認する必要があります。
申請条件となる「ハンズオン支援」とは?
本助成金を利用するうえで、特に重要なのが「ハンズオン支援」です。
ハンズオン支援とは、専門家などが企業に伴走しながら、課題の把握や計画策定、取り組みの実行を支援する仕組みです。
本事業では、東京都中小企業振興公社のマネージャーが中心となり、企業の状況に応じて各分野の専門家と連携しながら、脱炭素経営の推進を支援します。
支援期間は最長2年6か月で、専門家等によるコンサルティングを無料で受けられます。
ハンズオン支援では何をしてもらえる?
支援内容は、単に省エネ設備を紹介してもらうことにとどまりません。企業の経営課題を踏まえ、脱炭素の取り組みを事業成長につなげるための計画づくりや実行を支援します。
具体的には、次のような支援が考えられます。
1.現状の把握と課題の整理
工場や事務所のエネルギー使用状況を確認し、無駄な電力消費や改善できる工程がないかを検討します。
2.戦略・ロードマップの策定
どのような取り組みを、いつ、どのような順序で進めるのかを整理します。省エネ設備の導入に限らず、生産工程の改善や製品開発なども検討対象になります。
3.専門家による助言
必要に応じて、省エネ、製造技術・開発、IT、認証取得、広報活動などの専門家による支援を受けられます。
4.取り組みの実行と効果検証
取り組みを進めた後、コスト削減やCO₂排出量削減、販路拡大などの効果を確認し、今後の経営に生かします。
このように、脱炭素に関する知識が十分でない企業でも、専門家の支援を受けながら、自社に合った取り組みを検討できる仕組みになっています。
ハンズオン支援を受けるには?
助成金の利用を検討している場合、最初に行うのは助成金の申請ではなく、ハンズオン支援への申し込みです。
基本的な流れは次のとおりです。
1. ハンズオン支援に申し込む
東京都中小企業振興公社の公式ページで募集要項や対象要件を確認し、申込書等の必要書類を提出します。
2. 要件確認・支援決定
公社による要件確認や事前審査を経て支援対象として決定された後、担当マネージャーや各分野の専門家が派遣されます。
3. 戦略・ロードマップを策定する(約6か月)
専門家の伴走支援を受けながら、現状のエネルギー使用状況の把握や課題の整理を行い、脱炭素経営に向けた具体的な計画(戦略・ロードマップ)を策定します。
【その後の流れ(助成金を申請する場合)】
4. 助成金を申請する
策定した戦略・ロードマップに基づき、必要な設備導入等の経費について助成金を別途申請します。
5. 交付決定・事業実施
審査を経て交付決定を受けた後、事業を実施し、完了後の検査を経て助成金が支払われます。
なお、ハンズオン支援を受けたからといって、必ず助成金が採択されるわけではありません。また、助成金の申請には戦略・ロードマップの策定が必要となるため、設備導入を急いでいる場合は、あらかじめスケジュールを確認することが重要です。
脱炭素の一歩を踏み出すために
「脱炭素への対応を進めたいものの、何から始めればよいかわからない」 「省エネや環境への取り組みを、単なるコストではなく経営改善や売上アップにつなげたい」
このようなお悩みをお持ちの企業にとって、専門家の伴走を受けられるハンズオン支援は非常に心強い味方となります。設備投資を急ぐあまり計画が曖昧になるのを防ぎ、自社に最適なロードマップを描くためにも、まずはハンズオン支援の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
詳しい募集状況や申請方法については、東京都中小企業振興公社のハンズオン支援案内をご確認ください。
ハンズオン支援を活用した企業の事例
東京都中小企業振興公社が公表している取組事例を見ると、ハンズオン支援は省エネ設備の導入だけでなく、生産工程の改善や製品開発、販路拡大など、幅広い取り組みに活用されています。
ここでは、公表されている事例を参考に、企業がどのような課題に取り組み、脱炭素経営をどのように進めているのかを紹介します。
事例1:製造業における設備投資と生産工程の見直し
製造業では、工場で使用する電力や燃料の削減が、脱炭素経営を進めるうえで重要な課題となります。
しかし、単純に省エネ設備へ更新するだけでなく、生産工程全体を見直すことで、より大きな改善につながる場合があります。
東京都中小企業振興公社の取組事例では、製造ラインの見直しや設備投資、生産管理の効率化などを通じて、生産性の向上とCO₂排出量の削減を目指す企業が紹介されています。
例えば、加工工程の効率化によって作業時間や材料の無駄を減らすことができれば、製造コストの削減と環境負荷の低減を同時に目指せます。
ハンズオン支援では、専門家の助言を受けながら、自社の生産工程やエネルギー使用状況を確認し、改善すべき箇所や設備投資の優先順位を検討できます。
活用のポイント: 設備の更新だけを目的とするのではなく、生産性の向上や製造コストの削減も含めて、工程全体を見直すことが重要です。
事例2:自社の技術や製品の強みを脱炭素経営につなげる
脱炭素への取り組みは、エネルギー使用量を削減するだけではありません。自社の技術や製品が、顧客企業の環境負荷低減に貢献する可能性もあります。
公社の取組事例では、自社の加工技術を生かした改善提案や、製品開発を通じて、取引先の脱炭素にも貢献しようとする企業が紹介されています。
例えば、製品の製造工程を効率化できる技術や、設備の長寿命化につながる技術を持つ企業であれば、その技術が顧客の資源やエネルギーの使用量削減にどのように役立つかを検討できます。
また、環境面での効果を整理することで、取引先への提案や自社の技術のPRにもつなげられます。
ハンズオン支援では、製造技術や製品開発、広報活動などの専門家の助言を受けながら、自社の強みを脱炭素経営に生かす方法を検討できます。
活用のポイント: 脱炭素をコスト削減のためだけの取り組みと捉えず、自社の技術や製品の価値を高め、新たな取引や事業機会につなげる視点も大切です。
事例3:省エネと販路拡大を両立する取り組み
脱炭素への取り組みは、社内のコスト削減だけでなく、製品の付加価値や企業イメージの向上にもつながる可能性があります。
公社が紹介する取組事例には、省エネや再生可能エネルギーの活用に加え、環境配慮型製品の開発・販売や、業界内外への情報発信に取り組む企業もあります。
例えば、製造工程でのエネルギー使用量を削減するとともに、環境に配慮した製品やサービスの特徴を整理し、ホームページや展示会などで発信する方法が考えられます。
取引先がサプライチェーン全体でのCO₂排出量削減を進めている場合には、自社の取り組みや製品がどのように貢献できるのかを説明することも重要です。
ハンズオン支援では、脱炭素の取り組みをどのように社外へ発信するか、製品開発や販路拡大にどう結びつけるかについても検討できます。また、計画に基づく取り組みについては、要件を満たせばPR費などへの助成金活用も考えられます。
活用のポイント: 省エネによるコスト削減に加え、環境面での取り組みを自社の強みとして発信することで、販路拡大や取引先との関係強化につなげることも期待できます。
事例からわかる、ハンズオン支援の活用方法
これらの事例からわかるのは、脱炭素経営の進め方は企業の業種や課題によって異なるということです。
- 製造工程に課題がある企業: 設備投資や工程改善を通じて、生産性向上と省エネを目指す
- 独自の技術や製品を持つ企業: 環境負荷低減への貢献を整理し、製品開発や顧客への提案に生かす
- 自社の取り組みを事業成長につなげたい企業: 環境配慮型製品のPRや販路拡大を検討する
ハンズオン支援では、専門家とともに自社の現状や課題を整理し、戦略・ロードマップの策定から実行、効果検証まで取り組みを進められます。
脱炭素への対応を進めたいものの、何から始めればよいかわからない企業や、環境への取り組みを経営改善につなげたい企業は、まず支援制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。
詳しい事例は、東京都中小企業振興公社の取組事例一覧で確認できます。
申請前に確認しておきたい注意点
本制度を利用する際には、いくつか注意したい点があります。
ハンズオン支援と助成金は別の手続き
ハンズオン支援への申し込みと助成金の申請は別の手続きです。まず支援を受け、戦略・ロードマップを策定したうえで、助成金の申請を検討する必要があります。
助成対象となる経費を事前に確認する
省エネ設備の導入やPR、人材育成など、幅広い経費が対象となり得ますが、すべての設備や費用が助成されるわけではありません。具体的な取り組みが対象となるか、募集要項で確認しましょう。
助成金の入金までの資金計画を立てる
助成金は、原則として助成対象事業の完了後に検査・審査を経て支払われます。設備投資などに必要な資金を一時的に確保できるよう、自己資金や金融機関からの融資も含めた資金計画が重要です。
まとめ|脱炭素への取り組みを経営改善につなげる
東京都の「ゼロエミッション実現に向けた経営推進支援事業助成金」は、省エネ設備の導入だけでなく、脱炭素に向けたPRや人材育成など、企業の幅広い取り組みを支援する制度です。
特徴は、助成金の申請に先立ち、ハンズオン支援を通じて戦略・ロードマップを策定する必要があることです。
専門家による伴走支援を受けながら、自社の課題を整理し、脱炭素とコスト削減、生産性向上、販路拡大などを一体的に検討できます。
脱炭素への対応を進めたいものの、具体的な取り組み方がわからない企業や、設備投資を経営改善につなげたい企業は、まずハンズオン支援の利用を検討してみてはいかがでしょうか。
制度の詳細や最新の募集状況は、東京都中小企業振興公社の公式ページをご確認ください。
また、東京都ではクール・ネット東京を通じて、省エネ設備や再生可能エネルギー設備の導入など、さまざまな補助金・助成金制度も実施しています。設備導入を中心に検討している企業は、あわせてご覧ください。
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