補助金の最低賃金要件で返還トラブル続出?判断基準と正しい対策を解説
補助金の公募要領を読んでいると、「事業場内最低賃金を地域別最低賃金より30円以上高い水準にすること」といった要件を目にすることがあります。
しかし、実際に申請を検討する立場になると、次のような疑問が生じるのではないでしょうか。
- 最低賃金は、いつまでに引き上げればよいのか
- 申請時に達成していればよいのか、それとも採択後も毎年達成する必要があるのか
- 「年平均」で判定される要件と、「毎年」判定される要件は何が違うのか
- 地域別最低賃金が改定された場合、目標とする賃金水準も変わるのか
- 要件を達成できなかった場合、補助金は全額返還しなければならないのか
こうした疑問は、補助金を利用する企業にとって重要です。要件の理解を誤ると、賃上げを実施していたとしても、補助金のルール上は未達と判断される可能性があるためです。
2026年10月23日には、最低賃金に関する要件を達成できず、補助金の返還対象となっていた企業が28社あり、約2億9,063万円が未返還になっていたと報じられました。会計検査院は、企業側の賃金算定の誤りに加え、運営側の確認体制にも問題があったと指摘しています。
本コラムでは、このニュースをきっかけに、補助金における最低賃金要件の基本的な考え方を整理します。
そのうえで、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金を例に、「一人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上」と「事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上」という2つの要件について、いつ・どの時点で・どのように達成すればよいのかを詳しく解説します。
※補助金の要件は公募回や適用される規程によって変更される場合があります。本コラムは公募要領(2026年9月28日改訂の1.3版)の内容をもとにした解説です。申請時には、必ず対象となる公募回の公式資料をご確認ください。
1.最低賃金要件を巡る補助金の返還問題
28社で約2億9,063万円が未返還に
2026年10月23日の報道によると、中小企業基盤整備機構が交付する生産性向上に関する補助金を巡り、最低賃金に関する要件を達成できなかった企業が28社あり、約2億9,063万円が未返還となっていました。
報道では、補助金を受けた企業には、事業完了後3~5年の間、地域別最低賃金より30円以上高い水準にすることが求められていたとされています。
問題となったのは、企業側が最低賃金の算出方法を誤り、要件を達成したと誤って報告していたことです。また、会計検査院は、運営側が報告内容を裏付ける資料を十分に求めていなかった点も指摘しました。
この事例から分かるのは、賃金を引き上げるだけでは十分ではないということです。補助金で定められた方法で賃金を計算し、指定された時点で要件を満たしていることを確認し、必要な資料を用いて報告する必要があります。
なお、今回報道された補助金の要件と、以下で紹介する新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の要件は、必ずしも同一ではありません。制度ごとの違いを理解するため、具体例として取り上げます。
2.補助金における「最低賃金要件」とは?
地域別最低賃金と事業場内最低賃金の違い
最低賃金に関する要件を理解するためには、まず「地域別最低賃金」と「事業場内最低賃金」の違いを押さえておく必要があります。
地域別最低賃金とは、都道府県ごとに定められる最低賃金です。原則として、当該都道府県内の事業場で働く労働者に適用されます。毎年10月頃に改定されます。
一方、事業場内最低賃金とは、補助金の要件において、対象となる事業場で最も低い賃金水準を指します。補助金では、この事業場内最低賃金を地域別最低賃金と比較する仕組みが設けられています。
例えば、地域別最低賃金が1,100円の地域で、補助金の要件が「地域別最低賃金+30円以上」であるとします。この場合、事業場内最低賃金は1,130円以上である必要があります。
※上記は仕組みを説明するための仮定の数値です。
平均給与が上がっていても、最低賃金要件を満たすとは限らない
最低賃金要件と混同しやすいのが、給与支給総額や一人当たり給与支給総額の増加要件です。これらは、それぞれ異なる指標です。
例えば、従業員の大半の給与を引き上げ、一人当たり給与支給総額が目標どおりに増えたとしても、対象となる事業場で最も低い賃金が基準を下回っていれば、最低賃金要件を満たしません。反対に、最低賃金を一定水準以上に引き上げていても、一人当たり給与支給総額の目標に届かない場合があります。
| 要件 | 確認する内容 | 判定の仕方 |
|---|---|---|
| 事業場内最低賃金 | 事業場で最も低い賃金が、地域別最低賃金+30円以上の水準か | 水準そのものを判定 |
| 一人当たり給与支給総額 | 従業員1人当たりの給与が、目標どおり年平均で増加したか | 年平均成長率で判定 |
また、最低賃金の判定では、単純に月給額を労働時間で割ればよいとは限りません。月給制の場合は、賃金額を1か月の所定労働時間で割って時間額を算定しますが、最低賃金の対象となる賃金項目や換算方法は、公募要領や手引きで確認する必要があります。
3.具体例:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の賃上げ要件
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、従来の「新事業進出補助金」と「ものづくり補助金」が統合され、2026年度に始まった補助金です。革新的新製品・サービス枠、新事業進出枠、グローバル枠の3つの事業枠があります。
賃上げに関する要件は、次の4つで構成されています。
| 要件 | 内容 | 位置づけ |
|---|---|---|
| ① 賃上げ要件 | 補助事業終了後3~5年の事業計画期間で、一人当たり給与支給総額の年平均成長率を3.5%以上増加させること | 基本要件 全枠共通 |
| ② 事業場内最賃水準要件 | 補助事業終了後3~5年の事業計画期間で、毎年、事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高い水準であること | 基本要件 全枠共通 |
| ③ 賃上げ特例 | ①②の基準値に加え、一人当たり給与支給総額を年平均6.0%以上増加、かつ事業場内最低賃金を+50円以上とすること | 任意 補助上限額が引き上がる |
| ④ 地域別最低賃金引上げ特例 | 地域別最低賃金の引上げの影響を強く受けている事業者について、補助率が2/3に引き上がる特例 | 任意 適用すると②は除外 |
本コラムでは、特に判定の仕方に注意が必要な①②③を中心に解説します。
4.いつ・どの時点で達成するのか|「年平均」と「毎年」の違い
最低賃金要件で特に注意したいのが、達成すべき時期と、判定の仕方です。結論から言うと、①と②では次のように違います。
| 要件 | 判定の考え方 | 判定時点 | 途中年度に目標を 下回った場合 |
|---|---|---|---|
| ① 一人当たり給与支給総額 年平均 3.5%以上 | 基準年度から最終年度までの年平均成長率(複利) |
事業計画期間の 最終年度(一括) |
途中年度は返還なし(最終年度で判断) 判定は最終年度に行われるため、途中年度で一時的に下回っても即返還とはなりません。最終年度に目標達成できれば問題ありません。 |
| ② 事業場内最低賃金 地域別最賃 +30円以上 |
その年度における 水準そのもの |
毎年の事業化状況 報告時点(毎年) |
単年度ごとに返還が発生 毎年判定されるため、目標を下回った年度ごとに補助金の一部返還が生じます。 |
「毎年3.5%ずつ上げなければならない」わけでも、「30円上乗せは5年後に一度だけ満たせばよい」わけでもありません。それぞれ判定の仕方が異なります。
全体の流れ(図解①)
以下は、一人当たり給与支給総額が基準年度に300万円で、目標を基準値の3.5%、事業計画期間を5年とした場合のイメージです(試算)。
※以下の試算イメージは、「前半の年度をあえて足踏み(低め)に抑えた場合」の一例です。複利の計算上、前半を据え置くと後年度(3〜5年目)にものすごい急ピッチで大幅な賃上げを行って帳尻を合わせなければならなくなるため、計画的な引き上げが重要となります。
| 項目・判定ルール | 基準年度 | 1~2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目(最終) |
|---|---|---|---|---|---|
| ① 一人当たり給与支給総額【判定:年平均(最終年度に一括)】 | |||||
| 試算イメージ (前半足踏み・後年度で急増が必要) |
300.0万円 |
300.0万円 (※仮に横ばいの場合) |
約320万円 ▲後年で大幅増が必須 |
約340万円 ▲負担が急増する |
約356.3万円以上 (年平均3.5%達成) |
| 判定のタイミング | 基準設定 |
🔄 前半未達でも即返還なし ただし、前半に足踏み(横ばい)をすると複利計算のしわ寄せが来期以降に集中し、後半にものすごい急ピッチで賃上げして帳尻を合わせる必要があります(現実的には非常にハードルが高くなります) |
★ここで一括判定 5年間の「年平均」が3.5%増に達しているか最終確認 |
||
| ② 事業場内最低賃金【判定:毎年達成が必要】 | |||||
| 必要水準 | ― | 各都道府県の地域別最低賃金 + 30円以上 | |||
| 判定のタイミング | ― |
毎年・状況報告ごとに判定 こちらは毎年クリアが必須(未達の年度は部分返還) |
|||
※概念図です。実際の判定時期・報告期限は公募回によって異なります。年度の数え方は、後述の基準年度の考え方に従います。
基準年度とは何か
①の比較の基準となるのは、補助事業実施期間の終了時点が含まれる事業年度(基準年度)の一人当たり給与支給総額です。基準年度の次の事業年度から、事業計画1年目、2年目と数えていきます。
申請時点の給与水準ではなく、補助事業が終わる時点を含む事業年度が基準になる点に注意が必要です。
①一人当たり給与支給総額|「年平均」で、最終年度に判定される
年平均成長率は、複利で計算します。公募要領に示されている計算式は次のとおりです。
一人当たり給与支給総額の年平均成長率(%)={(報告年度の一人当たり給与支給総額 ÷ 基準年度の一人当たり給与支給総額)効果報告回数 - 1}× 100
例えば、基準年度の一人当たり給与支給総額が300万円で、年平均3.5%の目標を3年の事業計画で達成する場合、最終年度には次の金額以上が必要になります(試算)。
- 3年計画:300万円×1.035の3乗=約332万6,154円
- 5年計画:300万円×1.035の5乗=約356万3,059円
公募要領には端数処理の明記がないため、端数ぎりぎりの金額を狙わず、余裕を持った計画にしておくのが安全です。
この要件は最終年度時点で判定されるため、途中の年度で一時的に目標を下回っても、最終年度に目標値を達成していれば返還の対象にはなりません。ただし、事業化状況報告は毎年提出することになっているため、途中年度に目標を下回った場合は、その理由と最終年度に向けた見通しを説明できるようにしておく必要があります。
注意点が3つあります。
(1)判定されるのは「基準値」ではなく「自社が設定した目標値」です。
3.5%は下限であり、実際には申請者自身が基準値以上の目標値を設定します。高い目標値を設定すると審査で評価されますが、達成状況は自社で設定した目標値で判定されるため、無理のない目標設定が重要です。
(2)目標値は、交付申請時までに全従業員または従業員代表者へ表明する必要があります。
表明がされていなかった場合、交付決定の取り消しと補助金全額の返還を求められることがあります。
(3)意図的に給与水準を下げてから引き上げる方法は認められません。
例えば、申請後に一人当たり給与支給総額を7%引き下げ、その低い水準を基準として毎年3.5%ずつ増やしても、数字の上では要件を満たすように見えますが、故意または重過失による引下げを前提とした達成は認められません。一方、退職や業績変動など、やむを得ない事情による給与の変動まで一律に禁じられているわけではありません。給与水準が変動した場合は、その理由を説明できるようにしておくことが大切です。
また、算出対象となる従業員にも決まりがあります。
給与支給総額には、従業員に支払った給料・賃金・賞与等が含まれ、役員報酬・福利厚生費・法定福利費・退職金は含まれません。基準年度および算出対象の各事業年度で全月分の給与等の支給を受けた従業員が対象で、パートタイム従業員は正社員の就業時間に換算して人数を算出します。
②事業場内最低賃金|「毎年」判定される
②は、毎年の事業化状況報告時点で、事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高い水準であることが求められます。①と異なり、最終年度にまとめて判定されるわけではありません。
判定の対象は、補助事業を実施する事業場のうち、事業場内最低賃金が最も低くなる事業場です。事業場が複数ある場合は、旧制度の感覚で「主たる事業実施場所」だけを見ていると、判定結果が変わる可能性があります。
なお、雇用形態にかかわらず本要件は適用されますが、都道府県労働局長から最低賃金の減額特例の許可を受けている労働者は対象外です。
地域別最低賃金が改定されたらどうなる?
地域別最低賃金は毎年10月頃に改定されます。要件が「地域別最低賃金+30円以上」である以上、改定のたびに、必要な事業場内最低賃金の水準が上がります。
例えば、地域別最低賃金が1,100円から1,150円に引き上げられた場合(仮定)、必要な水準は1,130円から1,180円に上がります。つまり、ある年に30円を上回っていても、翌年以降は自動的に満たせるとは限りません。 事業計画期間中の最低賃金の改定を見据えて、賃金改定や人件費の計画を立てておく必要があります。
ただし、実際にどの時点の地域別最低賃金を用いて判定するかは、事業化状況報告の手引き(事務局のQ&Aやマニュアル)等で確認が必要です。
5.賃上げ特例とは?|基本要件(+30円)と特例(+50円)の違い
補助上限額の大幅な引き上げを狙う場合、任意のオプションである「賃上げ特例」を適用する選択肢があります。基本要件に比べて求められるハードルが高くなる分、受給できる補助金の上限が増額される仕組みです。
基本要件と賃上げ特例の要件比較
賃上げ特例を適用する場合、給与総額と最低賃金の両方で、通常(基本要件)よりも高い目標をクリアする必要があります。
| 比較項目 | ① 基本要件 | ② 賃上げ特例 | 上乗せ分 |
|---|---|---|---|
| 一人当たり給与支給総額 (年平均成長率) | 3.5%以上 | 6.0%以上 | +2.5 pt |
| 事業場内最低賃金 (地域別最賃との差) | +30円以上 | +50円以上 | +20円 |
賃上げ特例を適用するメリットとリスク
特例の適用には、大きなメリットがある反面、相応のリスクも伴います。
メリット:補助上限額が大幅にアップ
例えば「新事業進出枠(従業員数1~20人)」の場合、補助上限額が通常2,500万円から3,000万円へ(+500万円)引き上げられます。大型の設備投資や事業展開を検討している事業者にとって魅力的です。
リスク:どちらか一方でも未達なら厳格な返還が発生
2つの要件(6.0%増・+50円)のうち、いずれか一方でも達成できなかった場合、上乗せされた補助金枠の全額返還が求められます。さらに、基本要件(3.5%増)についても未達成率に応じた返還が生じます。
覚えておきたい注意点
- 基本要件にある「営業利益赤字などによる返還免除規定」が、特例の上乗せ部分には適用されません。
- 「地域別最低賃金引上げ特例(補助率が2/3に引き上がる特例)」は別の仕組みであり、こちらを適用すると基本要件の「事業場内最賃水準要件」自体が除外されます。
6.最低賃金要件を達成できなかった場合はどうなる?
要件を達成できなかった場合、原則として補助金の返還義務が生じます。
ただし、「要件を満たせなければ必ず全額返還」と一律に決まっているわけではありません。どの要件を達成できなかったのかによって、返還が必要になる条件や金額の計算方法が大きく異なります。
要件ごとの返還ルール一覧
| 対象となる要件 | 返還が発生する事由・条件 | 返還額の計算方法 |
|---|---|---|
|
① 一人当たり給与支給総額 (賃上げ要件) |
手続き違反 交付申請時までに、従業員等への目標値の表明を行わなかった場合 |
補助金全額を返還 (交付決定取消) |
|
数値未達成 最終年度に目標値(年平均3.5%増以上)を達成できなかった場合 |
未達成率に応じた返還 補助金交付額 ×(1 - 実績成長率 ÷ 目標値) ※成長率が0以下(マイナス)の場合は全額返還 |
|
|
② 事業場内最低賃金 (最賃水準要件) |
数値未達成 毎年の報告時点で、地域別最低賃金+30円以上を達成できなかった場合 |
未達年度ごとの返還 補助金交付額 ÷ 事業計画期間の年数 ※満たせなかった年度ごとに単年分を返還 |
| ③ 賃上げ特例 |
数値未達成 「給与6.0%増」または「最賃+50円」のいずれか一方でも未達の場合 |
特例の上乗せ分 全額 + 基本要件(①)部分の未達成率に応じた返還額 |
返還額の具体的イメージ(試算例)
実際の金額にあてはめて考えると、返還の仕組みがよりわかりやすくなります。
- 【① 給与支給総額の未達例】補助金交付額が1,000万円で、目標「3.5%増」に対して実績が「2.8%増」だった場合:
1,000万円 ×(1 - 2.8% ÷ 3.5%)= 200万円の返還となります。 - 【② 最低賃金の未達例】補助金交付額が1,500万円(5年計画)で、ある1つの年度だけ+30円を下回ってしまった場合:
1,500万円 ÷ 5年 = 300万円がその年度の返還額となります。未達の年度が増えるとその分返還額が加算されます。
赤字等による「返還免除」の規定
やむを得ない業績悪化等に対応するため、一定の救済措置(返還免除)が設けられています。
- 付加価値額が増加しておらず、かつ営業利益が赤字の場合
- 天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合
上記に該当する場合は返還が免除されるケースがありますが、①と②で免除が認められる条件(赤字判断の対象年度など)が微妙に異なります。最初から免除を前提とせず、確実に要件を達成できる現実的な賃金計画を立てることが重要です。
7.賃金の計算ミスや報告誤りにも注意
冒頭の報道では、企業側が最低賃金の算出方法を誤り、要件を達成したと報告していたことが問題となりました。賃金の水準を確認する際には、単に給与明細を見て判断するのではなく、補助金のルールに従って計算し、裏付け資料を保管しておくことが重要です。
最低賃金の判定に必要な資料としては、例えば次のようなものが考えられます。
- 賃金台帳
- 雇用契約書や労働条件通知書
- 所定労働時間などを確認できる資料
- 賃金計算の根拠となる資料
- 補助金の報告に用いた計算表
実際に必要となる資料は制度によって異なりますが、計算根拠を第三者にも説明できる状態にしておくことが大切です。特に②は毎年判定されるため、毎年の報告に向けて、事業場ごと・従業員ごとの時間額を継続的に確認できる体制を作っておくと安心です。
8.最低賃金要件で失敗しないためのチェックリスト
補助金を申請する際には、次の項目を事前に確認しておくとよいでしょう。
- 判定の対象となる事業場(最も事業場内最低賃金が低くなる事業場)を確認したか
- 事業場内最低賃金の計算方法(月給制の場合の時間額換算を含む)を確認したか
- 比較対象となる地域別最低賃金と、判定の基準日を確認したか
- +30円・+50円など、適用される水準を確認したか
- ①は最終年度に、②は毎年判定されることを理解しているか
- 基準年度(補助事業実施期間の終了時点を含む事業年度)の一人当たり給与支給総額を把握しているか
- 自社で設定する目標値を、交付申請時までに従業員へ表明する段取りができているか
- 地域別最低賃金の改定後の水準を見据えた賃金計画になっているか
- 賃金台帳などの裏付け資料を保存しているか
- 未達時の返還額と免除規定を確認したか
特に、事業完了後も複数年にわたって要件を達成する必要があるため、申請時点だけでなく、その後の人件費や賃金改定の見通しも含めて計画を立てることが重要です。
9.まとめ|最低賃金要件は、申請時だけでなく採択後も管理する
最低賃金に関する補助金の要件は、一見すると「地域別最低賃金より30円高くする」といった単純な条件に見えます。
しかし、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金を例に見ると、一人当たり給与支給総額は「基準年度から最終年度までの年平均」で最終年度に判定され、事業場内最低賃金は「毎年」判定されるというように、要件ごとに判定の仕方が異なります。さらに、対象となる事業場、賃金の計算方法、基準となる最低賃金、報告方法、未達時の返還ルールなど、確認すべき項目が複数あります。
また、基本要件と賃上げ特例では、求められる水準や未達時の扱いが大きく異なります。補助上限額の引上げだけに注目するのではなく、事業計画期間を通じて要件を達成できるかどうかを慎重に検討する必要があります。
今回の報道は、補助金の採択を受けることだけでなく、採択後に要件を正しく理解し、継続して管理することの重要性を示しています。補助率や補助上限額だけでなく、事業完了後の報告義務や返還リスクまで確認したうえで、無理のない事業計画を立てることが大切です。
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