公有地の拡大の推進に関する法律(公拡法)とは?事業用地の売却に必要な届出と行政書士の役割を解説

工場や店舗、事業所、遊休地などの不動産を売却・処分する際には、買主や売却価格の検討だけでなく、法令に基づく手続きの確認も必要です。

土地の所在地や面積、区域などの条件によっては、売買契約を締結する前に「公有地の拡大の推進に関する法律(公拡法)」に基づく届出が必要になる場合があります。

企業が事業再編や拠点の集約、工場の移転、保有資産の見直しなどを進める際には、こうした手続きを早い段階で把握しておくことが重要です。

本記事では、公拡法に基づく土地の先買い制度の概要、届出が必要となる土地の条件、手続きの流れ、契約実務での注意点、行政書士に相談できる業務について解説します。

公有地の拡大の推進に関する法律(公拡法)とは?

公有地の拡大の推進に関する法律(公拡法)とは、地方公共団体などが公共目的に必要な土地を取得しやすくするための法律です。一定の要件を満たす土地を有償で譲渡する場合、事前に自治体への届出(土地の先買い制度)が必要となります。


そこで公拡法は、一定の要件に該当する土地を有償で譲渡しようとする場合に、土地所有者に事前の届出を求める制度(第4条)を設けています。

この制度は、一般に「土地の先買い制度」と呼ばれています。

土地の先買い制度とは?

土地の先買い制度とは、一定の要件に該当する土地について、地方公共団体などが取得を希望するかどうかを確認し、希望がある場合に土地所有者と買取りの協議を行うための仕組みです。

ただし、届出をしたからといって、必ず買い取られるわけではありません。
買取りを希望する団体がなければ、その旨の通知を受けた後、予定していた民間への売却を進めることができます。

公拡法には、土地所有者に義務を課す「届出」(第4条)のほか、土地所有者の側から買取りを希望する「申出」(第5条)という制度もあります。

申出については後述します。

なぜ土地の売却前に届出が必要なのか?

届出制度の目的は、公共施設の整備や計画的なまちづくりに必要な土地を、地方公共団体などが取得する機会を確保することです。

次のような場面で土地の売却を検討している企業は、通常の不動産売買とは別に、届出の要否を確認する必要があります。

こんな不動産の売却を検討している企業様は要注意です
  • 工場の移転や生産拠点の再編に伴う工場跡地の売却
  • 店舗の閉鎖や事業所の統合に伴う土地の処分
  • 保有する遊休地や未利用地の売却
  • 事業再編や資産効率の改善を目的とした不動産の整理

この制度は、民間の土地取引を一律に禁止するものではありません。
行政側に買取りを検討する機会を与えたうえで、買取りの希望がなければ民間売買を進められる仕組みです。

公拡法の届出が必要になる土地と面積要件

公拡法の届出は、すべての土地売却に必要なわけではありません。
土地の所在する区域と面積が、法令(公拡法および同法施行令)で定められた要件に該当する場合に必要となります。

区域ごとの面積要件

都市計画施設(道路、公園、下水道など)の区域内 200㎡以上
都市計画区域内で、道路・都市公園・河川などの区域(予定区域含む) 200㎡以上
市街化区域内 5,000㎡以上
市街化区域以外の都市計画区域内(市街化調整区域など) 10,000㎡以上

この面積要件は法令で定められた全国共通の基準です。
自治体によって異なるのは、届出の窓口、様式、提出方法、運用上の取扱いといった部分です。

面積だけで判断してはいけない理由

工場跡地や事業用地のようにまとまった土地は、面積要件を満たしやすい傾向にあります。
一方で、200㎡の基準が適用される都市計画施設等の区域内の土地は、小規模でも対象になります。

土地の面積だけで届出の要否を判断せず、所在地がどの区域にあたるかを、自治体の都市計画担当窓口で確認してください。

届出が不要となる場合

面積要件を満たす場合でも、法令上の適用除外に該当すれば届出は不要です。
たとえば、国や地方公共団体などへ譲渡する場合が挙げられます。

また、令和6年9月19日からは、生産緑地法に基づく買取りの申出を行った土地に関する届出不要の要件が追加されています。
個別の土地が適用除外にあたるかどうかは、管轄自治体に確認が必要です。

「有償譲渡」に含まれる取引

届出の対象となる「有償譲渡」には、通常の売買のほか、交換、代物弁済、譲渡担保、およびこれらの予約が含まれるとされています(自治体の案内による)。
一方、贈与などの無償譲渡は、有償譲渡にはあたりません。
事業再編に伴う現物出資や組織再編による移転などは、個別に取扱いが分かれる可能性があるため、事前に自治体へ確認することをおすすめします。

公拡法に基づく届出は、いつ、どこに、どのように行う?

1. 届出を行う人

土地を有償で譲渡しようとする土地所有者が届出を行います。
法人が所有する土地であれば、その法人が届出義務者です。

不動産会社が売却を仲介している場合でも、届出義務者は土地所有者であり、誰が手続きを進めるのかを事前に整理しておく必要があります。

2. 届出のタイミング

届出は、土地を譲渡しようとする日の 3週間前まで に行う必要があります。
なお、期間の計算は 「届出をした日(窓口に書類が正式に受理された日)の翌日から起算して3週間」 となります。
契約締結前の届出が原則 であり、自治体によっては土日祝日を挟むと日数がタイトになるケースもあるため、実質1ヶ月前など余裕を持ったスケジュールで準備を進めることが望ましいです。

売却先が決まってから慌てて契約を進めるのではなく、売却方針を検討する段階で早めに要否を確認しておきましょう。

3. 届出先

届出先は、土地の所在地によって次のように異なります。

  • 一般の市町村の区域の土地:市町村長を経由して都道府県知事に届け出ます。
  • 指定都市や特別区など、自治体が直接受け付ける場合:その市長・区長に直接届け出ます。

実際の受付窓口は、土地の所在地の自治体の案内に従って確認してください。

4. 届出に必要な書類

届出書には、土地の所在・面積、譲渡予定価額、譲渡の相手方などを記載します。
自治体の案内では、一般的に次の書類が示されています。

  • 土地有償譲渡届出書(正本と控えの2部を求める自治体もあります)
  • 位置図、周辺図、平面図(公図など)
  • 委任状(代理人が手続きを行う場合)
  • 届出者の身分確認書類

届出書への押印は、施行規則の改正により令和3年1月1日から不要とされています。
また、電子申請に対応している自治体もあります。
必要書類や提出方法は自治体ごとに異なるため、必ず提出先の案内を確認してください。

届出後の流れと譲渡制限(第8条)

届出後は、次の流れで手続きが進みます(自治体の案内に基づく整理です)。

STEP 1
通知の到着(届出後〜3週間以内) 土地の買取りを希望する団体の有無が通知されます。
STEP 2-A
買取り希望がある場合 通知の日から3週間以内に土地所有者と買取り協議が行われます。協議の結果が決まるまで、民間への売却はできません。
STEP 2-B
買取り希望がない場合 その通知の日以降、スムーズに民間への売却を進めることができます。
■ 公拡法 第8条に基づく譲渡制限について

届出をした土地について、届出の日から3週間を経過する日まで(または法に定める通知があった場合はその通知に応じた時まで)、地方公共団体等以外の者への譲渡が制限されます。売買契約や引渡しの予定は、この期間を必ず前提に組む必要があります。

買取り協議になった場合

買取りを希望する団体がある場合は、土地の価額や条件について協議が行われます。

協議が成立すれば、地方公共団体等への売却となり、民間への売却予定は取りやめとなります。

協議が成立しなかった場合の民間への譲渡の可否や時期は、法令の定めと自治体の案内に従う必要があるため、個別に確認してください。

なお、買取りが成立した場合の税務上の特例の適用可否などは税理士への確認が必要です。

買取り希望の申出(第5条)との違い

第4条の届出が「売却しようとするときに義務として行う手続き」であるのに対し、第5条の申出は、土地所有者のほうから「地方公共団体等に買い取ってほしい」と希望する任意の制度です。
申出ができる土地の面積要件は、届出とは別に定められています。
(自治体の案内では、市街化区域100㎡以上、市街化調整区域200㎡以上、都市計画施設の区域内200㎡以上などが示されています)

申出をして所定の手続きを経た場合には、その後一定期間、第4条の届出をせずに土地を譲渡できるとされています。(自治体の案内では1年間とされています)
公共用地としての買取りを希望する土地であれば、申出が選択肢になります。

契約実務での注意点

公拡法の届出で最も実務上の調整が必要になるのが、不動産会社や買主との契約スケジュールです。特に注意すべき4つのポイントを整理しました

POINT 1契約は届出の後に行う

届出は契約締結前に行うのが大原則です。届出前に売買契約を締結しないよう、不動産会社や買主と事前にしっかりと共有してください。

POINT 2契約書への特記事項の記載

買取り協議の結果によって売買が実行できなくなるリスクがあるため、契約書には「公拡法に基づく届出の実施」や「買取り協議成立時の取扱い(契約の解除・白紙撤回など)」を明記しておく必要があります。

POINT 3停止条件付き契約の扱い

条件付きで事前に契約を結ぶ運用が可能かどうかは自治体によって見解が異なる場合があります。必ず管轄自治体に事前確認を行ってください。

POINT 4決済・引渡し日までの余裕を持った日程

売却代金の入金時期や新拠点への移転時期が決まっている場合は、届出後の3週間(通知待ち期間)を見込んで、余裕のあるスケジュールを組むことが重要です。

公拡法の届出をしないとどうなる?

届出が必要であるにもかかわらず、届出をしなかったり、虚偽の届出をしたりした場合には、 50万円以下の過料に処せられることがあります 。

さらに実務上重大なリスクとして、届出を怠って(あるいは虚偽の届出により)契約を締結した場合、売買契約そのものが無効になるリスクや、自治体から勧告を受ける可能性があります。

また、譲渡制限期間との関係でスケジュールに大きな支障が生じ、買主との間で深刻なトラブルに発展するおそれも否定できません。

事業再編や拠点移転に伴う売却では、他の経営計画や資金計画に密接に連動していることも多いため、売却方針が固まった段階で必ず事前に確認・対応しておくことが極めて重要です。

公拡法に基づく届出は行政書士に相談できる?

行政書士は、官公署に提出する書類の作成や、その提出手続きの代理などを業務としています。
公拡法に基づく届出も、官公署に提出する書類を伴う手続きですので、具体的な依頼内容に応じて行政書士に相談できます。

依頼するとどこが楽になるのか

公拡法の届出や自治体とのやり取りを行政書士に代行・サポートしてもらうことで、実務上次のようなメリットが生まれます。

メリット 1
自治体への事前照会 土地が対象区域にあたるか、面積要件や適用除外に該当するかを、管轄自治体に確認する窓口対応を丸ごとお任せいただけます。
メリット 2
届出書類の作成 土地有償譲渡届出書のほか、位置図・周辺図・平面図などの複雑な添付書類を適切に整理・作成します。
メリット 3
提出手続きの代理 委任を受けたうえで、窓口への提出や電子申請手続きを代理で行うため、本業の時間を取りません。
メリット 4
契約日からの逆算スケジュール管理 譲渡予定日の3週間前を起点に、届出、通知の確認、契約・引渡しまでのタイトな日程をスムーズに管理します。
メリット 5
届出後の連絡対応サポート 買取り希望の有無の通知を受けた後の流れを整理し、不動産会社や買主との調整に必要な情報を分かりやすく共有します。

他の専門家との業務分担

手続き・業務 行政書士
所有権移転などの登記 司法書士
譲渡所得や買取りに関する税務、税の特例の検討 税理士
売買の仲介・代理、売却先の選定 宅地建物取引業者
契約書の法的紛争・交渉の代理 弁護士

行政書士が対応できるのは、届出に関する書類作成と手続きの範囲です。
売買条件の交渉や登記、税務は、それぞれの専門家と連携して進めます。

相談から届出までの流れとスケジュール例

相談の流れ

STEP 1
ご相談 土地の所在地・面積・売却予定時期をお知らせください。
STEP 2
要否の確認 土地が対象区域にあたるか、面積要件を満たすかを調査し、自治体へ確認します。
STEP 3
お見積り・ご依頼 業務範囲と費用をご案内します。費用は土地の状況や業務範囲によって異なります。
STEP 4
書類の準備・届出 必要書類を整理し、届出書を作成して提出します。
STEP 5
届出後の対応 通知の確認と、契約・引渡しスケジュールの調整をサポートします。

■ スケジュール例(売却予定日から逆算)

売却予定日の1〜2か月前 届出の要否確認、書類準備
売却予定日の約1ヶ月前 届出書の提出
(※窓口に書類が受理された日の翌日から起算して3週間の制限がかかるため、不備によるやり取りも考慮し、余裕を持った提出が必要です)
届出後〜3週間以内 買取りを希望する団体の有無の通知
通知後 買取りの希望がなければ、売却契約・引渡しへ
買取り希望がある場合 買取り協議(協議の結果が決まるまで民間売買は不可)

まとめ|事業用地の売却前に公拡法の届出を確認しましょう

公拡法は、地方公共団体などが公共目的に必要な土地を取得する機会を確保するため、一定の土地を有償で譲渡しようとする場合に届出を求める制度です。事業用地の売却を検討している企業は、次の点を確認しておくことが重要です。

  • 土地の所在区域と面積から、届出の対象となるかを確認する(都市計画施設等は200㎡以上、市街化区域は5,000㎡以上、市街化区域以外の都市計画区域は10,000㎡以上)
  • 届出は譲渡しようとする日の3週間前までに、契約締結前に行う
  • 届出後の通知や期間の経過を確認するまでは、民間への譲渡を進められない
  • 届出をしない場合は、過料の対象となることがある

公拡法の届出は、土地の条件によって適用関係が異なります。

売却を予定している土地について不明な点がある場合は、所在地の自治体や行政書士などの専門家に、早めにご相談ください。