中小企業補助金はどう変わる?概算要求から見える来年度の方向性―大規模投資補助金はどうなる?

経済産業省が毎年夏に公表する「概算要求」は、翌年度の予算を編成するために財務省へ提示する要望です。ここからは来年度の補助金・支援策の方向性をいち早く読み取ることができます。ただし、制度名と一対一で対応しているわけではなく、「政策目的ごとにまとめられている」のが特徴です。

▶ 令和8年度概算要求・税制改正要望について(経済産業省)

「概算要求」はそもそも何なのか、そこから何が読み取れるのか。そして、読み取れる来年度の方向性について詳しく解説します。

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そもそも「概算要求」とは?

国の予算編成プロセスの最初のステップ

日本の予算は毎年4月から翌年3月までの1年間(会計年度)を単位に組まれます。
その予算をつくるために、各省庁は「来年度にこういう事業をやりたいので、これだけお金が必要です」と財務省に要望を出します
この要望書が 「概算要求」 です。

特徴は「大まかな見積もり」

概算要求は「詳細に決まった予算」ではなく、必要な金額の「大まかな見積もり」です。

そのため「制度名(例:小規模事業者持続化補助金)」が直接は書かれず、「小規模事業対策推進事業 62億円」といった政策目的ごとの「箱」で示されます。AIや半導体のように金額をまだ決められないものは 「事項要求」 として「金額未定」のまま要望されます。

国の予算編成の流れは?

概算要求が出されたあとは、次のような流れで予算が成立します。

  1. 秋以降、財務省が査定して「要求の一部を削る/修正する」
  2. 年末に政府案として「予算案」が決まる
  3. 翌年1~3月に国会審議を経て「当初予算」が成立
  4. その後、追加の経済対策などで「補正予算」が組まれることもある

つまり概算要求は、「来年度の予算の方向性を知るための最初の資料」といえます。

どう読み取る?

金額の増減 …どの分野に重点が置かれているかが分かる

新規事業の有無 …新しい制度が出てくる可能性を示唆

補正予算との組み合わせ …大型事業は「当初+補正」の二段構えが多い

制度名がない点に注意補助金の公募額を直接知ることはできず、「方向性を推測する」使い方がよい

今年の全体観は?―中小企業対策が厚く、GX・国際連携も大きな箱

まず大枠です。一般会計のうち中小企業対策費は 1,378 億円(前年度 1,080 億円)に増額要望。エネ特会や特許特会を含むと、重点はGXの推進、AI・半導体、そして中小企業の賃上げ・省力化へ――という配列が読み取れます。

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中小企業支援に関する概算要求のポイント

令和8年度概算要求では、中小企業対策費が1,378億円(前年1,080億円)と大幅に増加を要望しています

主な事業を整理すると、以下のようになります。

事業名令和8年度概算要求額令和7年度当初予算額主な内容
成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)128億円123億円中小企業の研究開発支援
大規模成長投資補助金60億円8.7億円+補正6000億円省力化・賃上げに向けた設備投資
中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業80億円34億円相談窓口・伴走支援
小規模事業対策推進等事業62億円61億円持続化補助金の基盤
地方公共団体小規模事業者支援推進事業16億円10億円自治体と連携した小規模事業者支援
中小企業活性化・事業承継総合支援事業222億円144億円事業承継・M&A支援
日本政策金融公庫補給金172億円153億円金融支援
中小企業信用補完制度関連補助事業50億円39億円信用保証制度の補完

読み取れる傾向は?

「賃上げ」「省力化」への重点

人手不足や物価高に対応するため、省力化投資や賃金向上につながる施策が強化されています。

「伴走型支援」の拡充

ワンストップ総合支援事業など、補助金だけでなく継続的に相談できる仕組みが広がっています。

事業承継・M&Aへの注力

後継者不足を背景に、承継支援やM&Aの体制強化が見られます。

小規模事業者支援の継続

持続化補助金の基盤となる事業費はほぼ横ばいで維持されています。

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中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金の方向性について

この補助金は本来「数十億円単位」で回すよりも、補正予算で数千億円規模を投じる設計なので、当初予算の増減だけを見ても実態は分かりにくいです。

概算要求資料には、

【60 億円、(8.7 億円、R5・R6 補正
計 6,000 億円(国庫債務負担行為)関連)】

と記載があります。

これはどういうことでしょう?

ここでのポイントは「当初予算」と「補正予算」の役割の違いです。

  • 当初予算(60億円)
    • 毎年の通常予算として組み込まれる
    • 額は小さいが、制度を常設化する意味合いがある
    • 通年で応募・制度設計を維持するための骨格
  • 補正予算(6,000億円規模)
    • 景気対策や物価高対応などその年の情勢に応じて追加される
    • 額が大きく、短期間に大型案件を一気に動かす火力

補正予算の役割とは?

補正予算は、当初予算成立後に、景気対策や物価高、災害対応などの理由で 追加的に国会で決める予算 です。
大規模成長投資補助金のように「政策的に急ぎたいテーマ」は、補正予算でドンと数千億円規模を確保し、短期間で大規模公募を実施する形になります。

大規模成長投資補助金のケース

当初予算:60億円  … 少額で制度を形として残すための運営枠

補正予算:6,000億円 … この分が実際の公募で「一気に市場に出回る」お金

実際の流れとしては次の通りです。

  1. 補正予算が成立すると、経産省・事務局が急ピッチで公募要領を作成
  2. 数百~数千件規模の公募が一斉に開始される
  3. 応募が殺到し、数ヶ月のうちに採択・契約・交付へ進む
    この時点で市場に資金が一気に流れる

つまり簡単に言うと「募集をすると、一気に補助金が放出される」ということで、その財源を確保するために補正予算を組む、という順序になります。

読み解きのポイント―大規模成長投資補助金の方向性

制度を「廃止」する動きではなく、むしろ恒常化を強めています。

当初予算の「60億円」という数字は、制度を常設化し維持する意思表示で、補正で数千億円の火力を持たせるのは従来どおりです。

したがって「規模が急拡大する」というよりも、「補助金を続けていく体制を固める」ということだと推察されます。

まとめ

来年度の補助金では、「省力化・賃上げ」「事業承継・M&A」「伴走支援」といったテーマが中心になりそうです。現在公表されている概算要求はあくまで方向性を示すもので、実際の公募内容は当初予算の成立や補正予算の決定を経て具体化します。そのため、補助金の活用を考えている事業者は、こうしたテーマの流れを早めに押さえ、準備を進めておくことが大切です。

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