訪日客4000万人時代へ ― オーバーツーリズム対策から読み解く、次の観光政策|観光庁の補助金

2025年、日本を訪れた外国人客数が年間4,000万人を突破しました。(2026年1月20日ニュース)

これは、コロナ前の最多水準を大きく上回る、歴史的な節目です。

一方で、観光地の混雑や住民生活への影響といった「オーバーツーリズム」が各地で顕在化し、観光をめぐる課題もこれまで以上に注目されるようになっています。

こうした状況を受け、国はすでに次の一手を打ち始めています。

本コラムでは、オーバーツーリズム対策から見えてくるこれからの観光政策の方向性、またどのような補助金制度があるのかを解説します。

訪日客4,000万人突破が意味するもの

2025年の訪日外国人客数は約4,270万人と推計され、初めて年間4,000万人を超えました。円安や国際線の回復を背景に、インバウンド需要は想定以上のスピードで拡大しています

政府は2030年に向けて、訪日外国人6,000万人、消費額15兆円という目標を掲げています。今回の4,000万人突破は、その通過点とも言えますが、同時に「量の拡大」だけでは立ち行かない段階に入ったことを示しています

オーバーツーリズムはなぜ問題になるのか

オーバーツーリズムとは、観光客の集中によって、地域住民の生活や自然環境、観光地そのものの魅力が損なわれる状態を指します。

交通渋滞、騒音、ごみ問題、地価や家賃の上昇など、その影響は多岐にわたります。

観光は本来、地域経済を支える重要な産業ですが、受け入れ環境が整わないまま需要だけが増えれば、住民との摩擦を生み、結果として観光地としての持続可能性を失いかねません

この点が、国がオーバーツーリズムを「放置できない課題」と捉えている理由です。

観光庁予算に表れた国の問題意識

観光庁の予算を見ると、この問題意識は明確に表れています。

令和7年度補正予算では、「観光需要分散のための地域観光資源のコンテンツ化促進事業」など、オーバーツーリズム対策を含む施策に多額の予算が計上されました。

さらに、令和8年度(2026年度)当初予算案では、「オーバーツーリズムの未然防止・抑制をはじめとする観光地の受入環境整備の促進」として、約100億円規模の予算が盛り込まれています。

補正予算が緊急対応であるのに対し、当初予算は来年度の基本方針を示すものです

両方に同様のテーマが含まれていることは、オーバーツーリズム対策が一過性ではなく、中長期的な政策課題として位置付けられていることを意味します

「需要拡大」から「需要分散」への政策転換

これまでの観光政策は、いかに訪日客を増やすか、いかに消費額を伸ばすかが中心でした。

しかし現在は、需要を単純に増やすのではなく、地域や時期、体験内容を分散させる方向へと転換しています

具体的には、地方誘客の促進地域固有の観光資源のコンテンツ化二次交通の整備、滞在型・体験型観光の強化などが重視されています。これらはすべて、特定の観光地への集中を避けつつ、地域全体で観光の恩恵を分かち合うための施策です。

実際に想定されている補助事業の内容|オーバーツーリズム対策としての補助金

ここで、現在公表されている具体的な補助事業(補助金制度)を紹介します。いずれも、オーバーツーリズム対策や観光需要分散を目的とした代表的な施策です。

※現在次回の募集は未定のため、内容は変わる可能性があります。

観光需要分散のための地域観光資源のコンテンツ化促進事業

現在、事務局の公募が行われているため次回も公募されることが想定されます

本事業は、地域に眠る観光資源を磨き上げ、特定地域・特定時期への集中を避けるための「新たな観光コンテンツ」の創出・高度化を支援するものです。単なるイベント実施ではなく、継続的な誘客につながる仕組みづくりが重視されます。

事業形態
調査事業等、間接補助事業

補助対象
地方公共団体、DMO、民間事業者 等

地域連携や複数主体での取り組みが想定されており、民間事業者単独ではなく、自治体やDMOと連携した企画が鍵になります。

補助額・補助率

  • ① 新創出型
    400万円まで定額、400万円を超える部分は事業費2,100万円まで補助1/2
    (最低事業費:600万円)
  • ② 品質向上型
    800万円まで定額、800万円を超える部分は事業費4,200万円まで補助1/2
    (最低事業費:1,200万円)
  • ③ 分野特化型(ガストロノミー)
    400万円まで定額、400万円を超える部分は事業費2,500万円まで補助1/2
    (最低事業費:600万円)

オーバーツーリズムの未然防止・抑制をはじめとする観光地の受入環境整備の促進

観光庁関係予算決定概要によると、本事業は以下のような予算になっています。

令和8年度当初予算:10,000百万円  

そのため、来年度以降の継続実施が想定されます。

こちらは、観光客の集中による混雑や生活環境への影響を抑えるため、観光地側の「受入環境」を整備することを目的とした事業です。

補助額・補助率

  • ① 間接補助事業
    補助率:2/3(補助上限額:2億円)、1/2(補助上限額:5,000万円)
  • ② 調査事業等

補助対象・請負先

  • ① 国 → 民間事業者 → 地方公共団体、登録DMO、民間事業者 等
  • ② 民間事業者 等

事業期間
令和8年度(2026年度)~

二次交通の整備、混雑対策、ICT活用、受入体制強化など、ハード・ソフト両面の整備が想定されており、観光事業者以外の企業にも関わる余地があります

今後、チャンスが生まれやすい分野とは

この流れの中で、今後チャンスが生まれやすいのは、いわゆる有名観光地だけではありません。むしろ、

  • 地域資源を活かした体験型コンテンツを持つ事業者
  • 観光と生活インフラの両立に関わる事業
  • 外国人観光客の受け入れ体制を整備する取り組み

といった分野です。観光政策は、観光事業者だけでなく、交通、IT、環境、地域づくりなど、幅広い事業者に関係するテーマになりつつあります。

まとめ:観光政策は新しいフェーズへ

訪日外国人4,000万人突破は、日本の観光が新しいフェーズに入ったことを象徴しています。これからは「どれだけ来てもらうか」ではなく、「どこで、どのように受け入れるか」が問われる時代です。

観光庁の予算や事業の方向性からも、オーバーツーリズム対策と需要分散を軸にした政策が、今後も継続していくことが読み取れます。観光に関わる事業者にとっては、制度の動きを正しく理解し、次の機会に備えることが重要になってくるでしょう。