事業再構築補助金:交付後に注意したいポイントまとめ【最新検査結果から学ぶ】
事業再構築補助金は、大きな投資を伴う「事業の転換」を国が後押しする制度であり、交付後の管理も重要です。
近年公表された会計検査院の検査結果では、事業者側の「認識不足」や「報告方法の誤り」に伴う指摘が相次いでおり、今後は制度運営側でも確認体制の見直しが進むと見込まれます。
本コラムでは、交付決定事業者が特に注意すべき点を、今回の検査結果に基づいて整理します。
実績報告は「実態に基づいた内容」で
会計検査院の報告では、以下のようなケースが不当として指摘されました。
- 実際には外注していないのに、外注費として計上
- 納品を受けていない物品を「納品済」と報告
- 事業が完了していないのに完了済として報告
(例:虚偽報告により約1.2億円の過大交付)
これは悪意というより、担当者の誤解や委託先への丸投げで起こることも多い部分です。
交付決定後は、実績報告書の作成プロセスを社内で一度立ち止まって確認することが重要です。
補助対象外の経費を誤って含めない
検査結果では、
- 補助対象外の工事費を補助対象に含めていた
- 要件を満たしていない(売上高等減少要件、新規性など)状態で申請していた
という指摘がありました。
補助金事務局は、書類ベースで判断できる範囲が限られるため、事業者側が正確に理解していることが前提です。
特に工事関係費(建築・設備)やソフト面の費用の線引きは誤りが起きやすいため注意が必要です。
「処分制限財産」の扱いは最重要
今回の検査で最も多く指摘があったのが、処分制限財産の扱いです。
どんな問題が起きていた?
- 新規事業に使うはずの設備を既存事業だけで使用していた
- 許可なく廃棄・貸付・譲渡していた
- 設備を遊休状態にしていた
(83事業で計317件、補助金相当額16億円超)
処分制限財産とは、取得額50万円以上の設備・建物等で、原則として事業計画に記載した新規事業にのみ使用する必要があるものです。
これらは補助事業終了後も一定期間、無断で廃棄したり目的外使用したりすると、残存簿価の返納が必要になる場合があります。
なぜ問題が多い?
- 設備導入後に計画を変更したが手続を忘れてしまう
- 既存事業でも使って良いと誤解している
- 現地調査(随時調査)がこれまで限定的だった
今後は、制度側でも把握方法の改善が求められているため、設備の利用状況について確認が行われる機会は増える可能性が高いといえます。
「事業化状況報告書」は内容の整合性を
事業完了後は、5年間にわたり毎年提出する「事業化状況・知的財産権報告書(事業化状況報告書)」があります。
検査結果では以下のような誤りが多数確認されました。
- 売上が無いのに「売上あり」として報告
- 既存事業の売上を合算して報告
- 事業化段階(1~5段階)の記述と売上・原価の内容が一致していない
(49事業で計13億円超)
報告書の内容は、国が効果検証を行う際の重要情報であるため、「数値の根拠」「事業化段階の定義」を正確に記載することが求められます。
交付後の5年間は「継続的な管理期間」
事業再構築補助金は、交付が決まって終わりではありません。
- 設備の利用状況(処分制限財産)
- 新規事業の売上や事業化段階
- 報告書の提出状況
- 計画変更時の手続
などについて、事業終了後5年間は継続して適切に管理する義務があります。
今回の検査結果を踏まえると、「事業計画の変更」「設備の用途変更」「事業化の遅れ」などが生じたら、すぐに相談・手続きを行う姿勢
がこれまで以上に求められると考えられます。
まとめ:重点管理項目おさらい
本コラムで取り上げたポイントは、いずれも「知らないうちに不適切な状態になってしまう」可能性がある部分です。
特に以下の3つは重点管理すべき項目です。
- 処分制限財産の利用状況
- 事業化状況報告書の正確な記載
- 実績報告書の内容確認と経費区分の正しい理解
制度側でも確認方法の見直しが進んでいるため、今後は事業者側の説明責任や管理強化がより求められることになります。

