ものづくり補助金と新事業進出補助金はなぜ統合されるのか?― 2026年度から見える中小企業向け補助金の新しい考え方
令和7年度補正予算・令和8年度当初予算に関連する中小企業庁の資料の中で、「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」が統合されることが示されています。
実際に制度内容を見ると、「名称が変わっただけでは?」「これまでの補助金と何が違うのか分かりにくい」と感じた方も多いのではないでしょうか。
本コラムでは、今回の統合が意味するもの、現在動いている補助金との関係、そして2026年度以降に企業が意識すべきポイントについて解説します。
統合される新しい補助金の全体像
中小企業庁の資料では、次の事業が示されています。
ものづくり商業サービス省力化・革新的開発・新事業・海外展開促進事業
(予算額:2,960億円/中小企業等事業再構築促進基金を活用)
この事業は、中小企業等の
- 売上拡大
- 生産性向上
- 付加価値額の増加
- 賃上げ
につながる投資を幅広く支援することを目的としています。
この事業は、「新事業進出・ものづくり補助金」「中小企業省力化投資補助金」で構成されます。
「新事業進出・ものづくり補助金」の中身 ― 補助額・補助率など
統合後の補助金では、「革新的新製品・サービス枠」「新事業進出枠」「グローバル枠」の3つの枠が設けられています。
革新的新製品・サービス枠
補助率:1/2、小規模・再生2/3
※最低賃金引上げ特例:補助率を2/3に引上げ(小規模・再生事業者は除く。)
補助上限額:5人以下 750万円(850万円)
6~20人 1,000万円(1,250万円)
21~50人 1,500万円(2,500万円)
51人以上 2,500万円(3,500万円)
※カッコ内は大幅賃上げを行う場合
新事業進出枠
補助率:1/2
※最低賃金引上げ特例:補助率を2/3に引上げ
補助上限額:20人以下 2,500万円(3,000万円)
21~50人 4,000万円(5,000万円)
51~100人 5,500万円(7,000万円)
101人以上 7,000万円(9,000万円)
※カッコ内は大幅賃上げを行う場合
グローバル枠
補助率:2/3
補助上限額:20人以下 2,500万円(3,000万円)
21~50人 4,000万円(5,000万円)
51~100人 5,500万円(7,000万円)
101人以上 7,000万円(9,000万円)
※カッコ内は大幅賃上げを行う場合
従来の補助金との比較
- 革新的新製品・サービス枠
→ 従来の「ものづくり補助金」に近い - 新事業進出枠
→ これまでの「新事業進出補助金」と大きな違いは少ない
と感じられる方も多いでしょう。
実際、個々の要件だけを見ると、制度が大きく変わった印象はありません。
なぜ統合する必要があったのか
今回の統合の本質は、補助金の整理ではなく「評価軸の統一」にあります。
これまでの制度では、
- 技術開発なら「ものづくり補助金」
- 事業転換なら「新事業進出補助金」
と、補助金ごとに視点が分かれていました。
一方、統合後は、その投資が
・売上拡大につながるか
・生産性や付加価値を高めるか
・将来的な賃上げを説明できるか
といった共通の成長ストーリーが重視される構造になっています。
つまり、「何をやるか」よりも「なぜそれをやるのか」がより強く問われる補助金へと整理されたと考えられます。
現在公募中の補助金との関係
現時点では、統合前の制度として次の公募が動いています。
ものづくり補助金(2025年度・22次公募)
- 申請締切:2026年1月30日
- 採択公表:2026年4月下旬頃予定
新事業進出補助金(第3回公募)
- 申請締切:2026年3月26日
- 採択発表:2026年7月頃予定
これらは、統合前の制度として実施される最終局面の公募と見るのが自然でしょう。
統合後の公募時期はいつ頃になるのか
資料上、明確な公募開始時期は示されていませんが、
- 新事業進出補助金の採択発表が2026年7月頃
- 新制度は要領・審査基準の再整理が必要
- 過去の再編時も、初回公募まで一定期間が空いた
といった点を踏まえると、統合後の初回公募は、2026年夏以降(7月~秋頃)になる可能性が高いと予想します。
今から企業が考えておくべきこと
統合後の補助金では、設備投資の内容、新事業のアイデアだけでなく、
- 既存事業との関係性
- 売上・付加価値の伸ばし方
- 人材・賃上げへの波及
まで含めた説明が重要になります。
単に「新しい機械を入れたい」「新しい事業を始めたい」ではなく、会社としてどこへ向かう投資なのかを整理しておくことが、今後ますます求められるでしょう。
まとめ
今回の統合は、「ものづくり補助金がなくなる」「新事業進出補助金が終わる」という話ではありません。
中小企業の成長投資を、一つの補助金体系で評価するための再設計と捉えるのが適切です。
2026年度以降の公募を見据え、今のうちから事業の方向性や成長ストーリーを整理しておくことが、補助金活用の大きなポイントになりそうです。
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