食品の消費税ゼロで本当に8%安くなる?経営者が知っておきたい減税の現実
食品の消費税率をゼロにする――。
2026年度内の実現も視野に、与野党からこうした政策が打ち出されています。
一見すると「食品価格が一律で8%下がる」「消費者にとって大きな追い風」と受け取られがちですが、実際の店頭価格や事業者の収益への影響は、そこまで単純ではありません。
専門家や事業者の間では、消費税の仕組み上、価格が一律に下がるとは限らないという指摘も出ています。
本コラムでは、消費税の仕組みや海外事例を踏まえながら、経営者として押さえておくべきポイントを解説します。
食品の消費税ゼロは「8%値下げ」を意味するのか
食品の消費税率がゼロになれば、理論上は現在の軽減税率8%分、価格が下がるように見えます。
しかし、実際の店頭価格がそのまま8%下がるかどうかは、別の問題です。
その理由は、消費税が「最終的に消費者が負担する税」である一方、納税の実務はサプライチェーン全体で分担されている点にあります。
消費税は誰が負担しているのか
消費者が支払った消費税は、小売店がそのまま全額を国に納めているわけではありません。
仕入れ時に支払った消費税は控除され、差額のみを納税します。
メーカー、卸売、小売と、各段階で同様の計算が行われ、結果として「消費者が払った税額を、事業者同士で分け合って納めている」構造になっています。
なぜ価格は一律に下がらないのか
価格が一律に8%下がらない最大の理由は、価格決定が各事業者の判断に委ねられているからです。
食品価格には、原材料費だけでなく、人件費、物流費、包装材費、店舗賃料など、さまざまなコストが含まれています。
仮に減税で納税額が減ったとしても、それを
- 値下げに使うのか
- 上昇している人件費や経費の補填に回すのか
は、各事業者の経営判断次第です。
また、値下げを行うと短期的に現金収入が減るため、資金繰りを意識して価格を維持する判断も十分に考えられます。
海外事例(ドイツ)に見る減税の実際
ドイツでは2020年、新型コロナ対策として付加価値税が一時的に引き下げられました。
しかし研究結果によると、スーパーの店頭価格の下落は減税分の約7割程度にとどまったとされています。
さらに注目すべきは、再増税時に価格を元に戻しきれなかった点です。
減税は一時的に消費者の負担を軽くする一方、事業者にとっては価格戦略を難しくするリスクもあります。
制度設計次第で変わる事業者への影響
食品の消費税ゼロが「非課税取引」になるのか「免税取引」になるのかによっても、事業者への影響は変わります。
制度設計次第では、
- 仕入税額控除の範囲
- 食品以外の売上や間接コストとの関係
が変わり、同じ食品を扱っていても、業種や企業規模によって受ける影響に差が出る可能性があります。
経営者が今、考えておくべきこと
消費税減税は「追い風」と見られがちですが、自動的に売上や利益が伸びる制度ではありません。
経営者としては、
- 減税=値下げ前提で事業計画を立てない
- 一時的な制度変更として冷静に捉える
- キャッシュフローへの影響も含めて考える
といった視点が重要になります。
制度が決まってから慌てるのではなく、「どの前提が変わり得るのか」を整理しておくことが、安定した経営判断につながります。

