経産省が検討する「試作品購入支援」とは?スタートアップの量産を後押しする新たな補助制度の動き

スタートアップ、とりわけディープテック分野では、「技術はあるが、最初の取引が生まれない」という壁に直面するケースが少なくありません。

こうした状況を踏まえ、経済産業省が新たな支援策として検討しているのが、スタートアップの試作品を「大企業が購入する際の費用を補助する制度」です

本コラムでは、

  • この制度がどのような背景で検討されているのか
  • 既存のスタートアップ支援策と何が違うのか
  • スタートアップ側は今から何を意識すべきか

を、公開されている予算資料も踏まえて解説します。

試作品購入支援とはどのような制度か

日経報道によると、経済産業省は、スタートアップが開発した試作品を大企業が購入した場合、その費用の最大半額を補助する制度を検討しています。

対象分野は、

  • 量子
  • AI
  • ロボティクス
  • 医療機器
    など、いわゆるディープテック領域が想定されています。

目的は、研究開発段階にとどまりがちな技術について、「最初の商取引」を生み出し、量産・事業化につなげることです。

なぜ「購入する大企業」を支援するのか

従来の補助金は、スタートアップ自身への研究開発補助設備投資補助が中心でした。

一方で今回の制度は、購入する側(大企業)に補助を出すという点が特徴です

これは、

  • 技術評価が難しい
  • 実績がないと購入判断しづらい

という大企業側のハードルを下げ、スタートアップとの最初の取引を後押しする狙いがあると考えられます。

どの予算・事業と関係していそうか

令和8年度(2026年度)当初予算案および補正予算を見ると、スタートアップ支援関連として、以下の事業が計上されています。

日経報道で触れられている「基金を活用」「45億円規模」という点を踏まえると、グローバル・スタートアップ創出支援事業の枠組みの中で、新たな支援メニューとして追加される可能性が高いと考えられます。

現時点では事業名など明らかになっていませんが、予算の流れから見ると、突発的な制度ではなく、既存のスタートアップ支援政策の延長線上にある施策といえます。

関連コラム

中小企業補助金はどう変わる?概算要求から見える来年度の方向性

「成長戦略本部」設置で変わる?重点投資が補助金政策に与える影響

スタートアップ支援の最新動向:海外投資を呼び込む新ルールと主な施策

スタートアップ側にとっての意味

この制度が実現した場合、スタートアップにとって重要なのは、「補助金を直接もらえるか」ではありません。

むしろポイントは、

  • 試作品を売れる形で整理できているか
  • 大企業との契約・知財・責任範囲を説明できるか
  • 量産を見据えたストーリーを描けているか

といった、事業化フェーズへの備えです。

制度は「きっかけ」を与えるに過ぎず、その後の取引継続や量産に進めるかどうかは、スタートアップ側の準備にかかっています

大企業にとっての意味

一方、大企業側にとっても、この制度は単なるコスト補助ではありません。

  • 新技術の探索
  • オープンイノベーションの実証
  • 将来の事業提携の種まき

を、リスクを抑えながら進められる仕組みといえます。

特に、これまで「PoC止まりで終わってしまう」ことが多かった企業にとっては、実取引に踏み出す後押しになる可能性があります

まとめ

今回の試作品購入支援は、まだ正式な公募制度として発表されたものではありませんが、制度化される可能性は十分にあります。

スタートアップにとっては、「制度が始まってから考える」のではなく、今のうちに事業化・量産を見据えた準備を進めておくことが重要といえるでしょう。