【2026年度新設】廃旅館の解体費が壁だった温泉街に追い風|観光庁「廃屋撤去・再生による地方温泉地等のまちづくり支援事業」とは

地方の温泉街では、かつて団体旅行向けに建てられた大型旅館が廃業し、そのまま廃墟化しているケースが少なくありません。

本来であれば、現在の旅行需要に合わせて小規模・高付加価値型の宿泊施設へ転換することで事業性が見込める立地であっても、「解体・減築費用が過大」という理由から再生が進まない――これは多くの温泉地が抱える共通課題です。

こうしたボトルネックに対応するため、観光庁は令和8年度(2026年度)から新たに 「廃屋撤去・再生による地方温泉地等のまちづくり支援事業」を創設しました。

本コラムでは、この新制度の概要と、どのような事業者・自治体にとってチャンスとなるのかを解説します。

なぜ今「廃旅館の撤去・減築」が支援されるのか

現在の観光需要は、団体旅行中心から

  • 個人旅行
  • 少人数
  • 長期滞在・高付加価値 へと大きく変化しています。

しかし、温泉街の中心地には過去の需要構造に合わせて建てられた大型・堅牢な旅館建築が残り、これが再投資の大きな障壁となってきました。

観光庁は、この「建物が大きすぎること自体が再生を妨げている」という構造問題に着目し、 解体・減築という初期段階から支援する新制度を打ち出した点が、本事業の最大の特徴です。

事業概要|廃屋撤去・再生による地方温泉地等のまちづくり支援事業

  • 事業名:廃屋撤去・再生による地方温泉地等のまちづくり支援事業
  • 予算額:10億円(令和8年度)
  • 事業形態:間接補助事業
  • 補助率:2/3
  • 事業期間:令和8年度~

国 → 民間事業者 → 地方公共団体・宿泊事業者、というスキームで実施される点も特徴です。

補助上限額やスケジュールは?

現時点では、1事業あたりの補助上限額や公募スケジュールは公表されていません

なお、予算規模や事業内容(解体・減築という高額工程が対象)を踏まえると、 数千万円~数億円規模の事業を想定した制度となる可能性も考えられ、 小規模補助金とは異なる視点での事業設計が求められそうです

補助対象となる具体的な取組内容

本事業では、単なる建替えではなく、再生を前提とした撤去・減築が補助対象となります。

① 温泉街中心地における廃旅館等の撤去・減築

  • 対象:廃旅館などの堅牢な建築物
  • 条件:再生後は宿泊施設として供されること

ポイント

  • フル解体だけでなく「減築」も対象
  • 小規模旅館・ブティックホテルへの転換を想定

② 相乗効果を生む周辺取組

①と併せて行う以下のような取組も対象となります。

  • 周辺の廃屋撤去・減築
  • 観光施設としての跡地活用

※撤去後は観光施設に供されることが条件です。

事業のポイント|宿単体ではなくエリア再生が前提

本事業では、市町村等による 「新たな旅館等を含んだエリア再生計画」の策定が要件とされています。

計画には、例えば以下の内容が求められます。

  • 地域の将来像と観光のあり方
  • 観光客数・滞在日数などの具体的指標
  • 廃屋跡地の利用指針
  • 減築後・再生後の施設活用方針

つまり、「1軒の宿を再生する」だけではなく、 「温泉街全体のにぎわいをどう取り戻すか」という視点が不可欠な制度です

どんな事業者・自治体に向いているか

特に相性が良いのは、次のようなケースです。

一方で、単独事業・短期収益のみを目的とした計画では、制度趣旨との整合が求められる点には注意が必要です。

宿泊事業者以外の向いている事業者は?

本事業は、補助対象が「宿泊施設の再生」に設定されているため、 一見すると宿泊事業者向けの制度に見えます。

しかし実際には、廃旅館の撤去・減築という高額かつ初期リスクの高い工程が含まれること、 さらにエリア再生計画の策定が要件とされていることから、 関係する事業者は宿泊事業者に限られません。

特に、次のような関係者が関わることで、事業として成立しやすくなる制度といえます。

このような不動産・開発事業者は、直接補助を受ける主体というよりも

  • 廃旅館・廃屋の取得・権利調整
  • 解体・減築を含めた再生スキームの構築
  • 宿泊事業者や自治体と連携した事業化の支援

といった形で関与するケースが想定されます。

特に、事業性自体は見込めるものの、 「解体費がネックで誰も手を出せなかった物件」においては、 補助制度を前提に再生可能性を整理する役割として、 不動産・デベロッパーの関与余地は大きいといえるでしょう。

まとめ

「廃屋撤去・再生による地方温泉地等のまちづくり支援事業」は、

  • 解体・減築というこれまで支援されにくかった工程を正面から支援
  • 宿泊施設再生を起点とした温泉街全体の再構築を促す

という点で、これまでにない性格の補助事業です。

廃旅館が負の遺産として残るのか、 次の観光需要を生む再生の起点になるのか。

2026年度以降、温泉地再生を検討する地域にとって、 早期の情報整理と計画づくりが重要になりそうです。