【2026年度税制改正】設備投資促進減税案を徹底解説|7%税額控除・即時償却・対象要件・必要な手続きまで
政府・与党が2026年度税制改正に向けて検討している「設備投資促進減税案」が明らかになりました。
本制度は 全業種が対象で、一定規模以上の設備投資に対し 税額控除(7%) または 即時償却 を選べるという、大胆な支援策となる見込みです。
中小企業の場合、要件を満たせば 5億円以上の投資で活用可能とされ、工場・拠点の新設や建物投資にも適用される可能性があります。
本コラムでは、制度の内容を詳しく解説。投資の検討段階で「何を準備すればよいか」が理解できる内容となっています。
設備投資促進減税案とは
2025年12月、政府・与党は大規模設備投資を促すための新たな減税案を検討していることが報じられました。
本案のポイントは次のとおりです。
- 全業種が対象
- 7%税額控除または即時償却の選択制
- 投資規模:大企業35億円以上、中小企業5億円以上
- 生産設備だけでなく建物投資も対象になる見込み
- 米国追加関税の影響を受けた企業は税額控除を最大3年繰り越し可能
- 2028年度末までに投資計画の確認が必要
過去の税制優遇制度と比較しても、対象範囲の広さと選択肢の多さが特徴で、国内投資の活性化を狙った内容になっています。
対象となる投資規模・対象業種
今回の制度では、業種の制限がなく、製造業・建設業・小売業・サービス業など全ての業種が対象となる見通しです。
中小企業の最低投資額は 5億円以上。
これほどの規模になると
- 工場新設
- 倉庫・物流拠点の建築
- 自社ビル建設
- 新ライン導入
など、複数の投資が組み合わさるケースが想定されます。
また、建物が対象に含まれる点は、過去の生産性向上税制などと比べても大きな特徴です。
税額控除(7%)と即時償却の仕組み
企業は投資後の節税方法として、次の2つから選択できます。
①税額控除:投資額の7%を直接税額から差し引く
例えば5億円の投資を行った場合
→ 3,500万円の税額控除が可能。
メリット:
- 税負担が直接軽くなる
- キャッシュフローへの効果が大きい
米国追加関税の影響を受ける事業者は、最大3年間繰越が可能とされています。
②即時償却:投資額全額を初年度に経費化
通常は建物の償却は長期にわたりますが、本制度では初年度に一括計上できます。
メリット:
- 初年度の利益圧縮による節税効果
- 将来の償却負担軽減
- 資金調達時の返済計画と合わせて検討しやすい
どちらが得かは「利益見通し」「資金繰り状況」によって変わるため、制度を理解した上で事前に試算することが重要です。
即時償却と税額控除について詳しく解説したコラム
こちらのコラムでは、即時償却と税額控除どちらを選ぶべきかなど、シミュレーション例を交え詳しく解説しています。
制度の利用に必要な「投資計画の確認」とは?
今回の制度で特に重要なのが、
2028年度末までに「投資計画の確認」を受けること
です。
これは、制度を利用したい企業が、「どのような設備投資を行い、その投資が生産性向上や国内投資促進に寄与するか」を説明し、行政機関(経産省またはその委任先)から妥当性の確認を受ける手続きを意味します。
過去の類似制度でも、
・計画の作成
・根拠資料の添付
・自治体や国の確認
といったプロセスが必須でした。
今回も同様の形式を採用する可能性が高く、企業にとってはここが最初のハードルとなります。
現行の税制優遇制度と同じ「二段階のフロー」になる見込み
今回の設備投資促進減税案は、これまでの投資税制と同じように、以下の2つのステップで進む形 が想定されます。
- 制度を使うための事前手続き(投資計画の確認など)
- 実際に税制を適用するための税務申告
この流れは、「中小企業投資促進税制」や「生産性向上特別措置法の計画認定」など、従来の制度と非常に近い構造です。
① 投資計画の確認(経産省・自治体等)
税制を使う前に、まず「この投資が制度の対象として妥当か」について、経産省または所管機関から確認を受ける必要があります。
この段階では主に、
- 投資の内容(設備・建物・生産性向上の効果など)の整理
- 投資理由や事業計画の記載
- 根拠資料(見積書・仕様書等)の準備
- 申請書類の作成と提出
- 必要に応じて、建築・用途変更など周辺手続きの確認
といった 事前準備が中心 になります。
これらは企業自身が進めることもできますし、行政書士を含む外部の専門家がサポートする形になることも一般的です。
② 税制の適用(税務署)
計画の確認が通ったあとは、実際に税制を使うかどうかを 企業が判断 します。
そのうえで、
- 税額控除(7%控除)
- 即時償却
のいずれかを選んで税務申告します。
税務申告は、
- 企業自身で行う
- 税理士に依頼する
のいずれの方法も可能で、従来の投資税制と同じシンプルな流れです。
制度を活用するメリット・リスク
メリット
- 国内投資への強力なインセンティブ
- 設備投資の回収期間を短縮できる
- 税負担が大きく軽減される
リスク・留意点
- 投資規模が大きいため、失敗した場合のダメージが大きい
- 制度の確定には税制改正大綱の公表・法案成立が必要
- 計画確認の期限に注意が必要
- 建築許認可など周辺業務が複雑になる可能性
減税メリットが魅力的でも、投資判断はあくまで 収益性と安全性を最優先に すべきです。
まとめ
設備投資促進減税案は、全業種を対象とした大規模な税制優遇で、企業の投資戦略に大きな影響を与える可能性があります。
特に中小企業は、
- 投資計画の確認
- 文書化や資料作成
- 許認可の考慮
など、検討すべき事項が多く、早めに準備をしておくことでスムーズに活用できます。

