東京都「BCP実践促進助成金」とは?中小企業の危機管理を後押しする支援制度を解説

地震や台風、感染症など、企業活動を揺るがすリスクは年々多様化しています。

突然の事態に直面しても事業を続けられるように「BCP(事業継続計画)」の必要性が高まっており、近年は中小企業でも取引先からBCP整備を求められるケースが少なくありません。

しかし、BCPは策定するだけでは不十分で、実際に実践できる状態にしておくための備蓄品設備IT環境の整備など、具体的な投資が必要です。こうした背景から東京都が実施しているのが「BCP実践促進助成金」です

今回、第3回の募集要項が公開されたため、初めてこの制度を知る方に向けて概要をわかりやすくまとめます。

BCP(事業継続計画)とは?

BCPとは、自然災害や感染症などの予期せぬ事態が発生した際に、企業の重要な業務を継続するための行動や手順をあらかじめ取り決めた計画のことです。
簡単に言うと「会社の命綱となる業務を止めないための準備」といえます。

BCPには、以下のようなポイントが含まれます。

策定そのものは書類ベースで行うことができますが、備蓄品・設備の購入や安全対策の実装には費用が必要です
その実行部分を支援するのが、東京都の助成金制度です。

東京都「BCP実践促進助成金」の概要

東京都が実施する「BCP実践促進助成金」は、策定したBCPを実践するために必要な基本的な物品・設備の導入費用の一部を助成する制度です。中小企業が災害に備える基盤づくりを支援することを目的としており、備蓄品からシステムのクラウド化まで、幅広い項目が対象となります。

対象となる法人は中小企業者小規模企業者などですが、NPO法人・医療法人・学校法人など一部の法人は対象外となっています。事前に募集要項で対象業種・法人を確認する必要があります。


詳細は公式ページへ

BCP実践促進助成金(東京都)


なお、第3回申請受付は次の期間で実施されます。

【申請受付期間】
2026年1月7日(水)9:00~2026年1月14日(水)17:00

エントリーから電子申請まで期間が短いため、早めの準備がポイントになります。

助成対象となる具体的な物品・設備

本助成金では、BCPを実践するために必要な幅広い物品が対象になります。主な例には次のものがあります。

災害時の備蓄品

  • 食料・飲料水
  • 毛布・簡易トイレ
  • 救急用品
  • 従業員用の防災セット

設備・防災対策機器

  • 発電機やポータブル電源
  • 土のう、止水板
  • 転倒防止装置
  • 耐震診断費用

情報・データ保全のための設備

  • NAS(データバックアップ機器)
  • クラウドサービスによるバックアップ
  • 基幹システムのクラウド化

備蓄品だけではなく、IT環境の強化にも使える助成金という点が大きな特徴です。特に近年は、社内システムをクラウド化しておくことで、災害時の被害を最小限に抑える企業が増えています。

助成率と限度額

助成率と限度額は、企業規模や申請方式により次のように分かれています。

単独型(通常の申請)

  • 中小企業者:助成率 1/2以内
  • 小規模企業者:助成率 2/3以内
  • 限度額:1,500万円(下限10万円)

この1,500万円には、基幹システムのクラウド化費用(450万円まで)が含まれています。

連携型(複数事業所での共同利用)

  • 助成率:1/2以内
  • 限度額:1,500万円

どちらの場合も、備蓄品の更新からITインフラ整備まで対応できるため、「BCPを実行したいが予算が限られている」という企業にとって実用性の高い制度です。

申請方法の流れ

申請は以下の流れで進みます。

  1. 申請エントリー(公社ホームページから)
     ※ネットクラブ会員登録が必要
  2. 電子申請(Jグランツ)
     ※GビズIDプライムが必要
  3. 審査 → 交付決定
  4. 事業実施
  5. 完了報告 → 検査
  6. 助成額確定 → 助成金の支払い

特にエントリーをしないと電子申請に進めない点に注意が必要です。
募集期間が短いため、事前準備をしておくことがスムーズな申請につながります。

どのような企業に向いている制度か?

この助成金は、以下のようなニーズを持つ企業に向いています。

「BCPは作ったが実践できていない」という企業にとって、現実的な改善につながる助成金といえます。

まとめ

BCPは、単なる書類として作成するだけでは十分ではありません。実際に使える備蓄品や設備が揃っていることで、災害発生時に事業継続の力を発揮します。

東京都のBCP実践促進助成金は、その実践部分を後押しする心強い制度です。備蓄品の整備やクラウド化など、多岐にわたる改善を支援してくれるため、これを機にBCP体制を見直す企業も少なくありません。

初めてBCPに取り組む方や、以前策定したBCPの更新を考えている方にとって、今回の募集は大きなチャンスとなるでしょう。制度の対象やスケジュールを確認したうえで、自社に必要な対策を検討してみてはいかがでしょうか。