総合経済対策が示す「中小企業支援の方向性」―補助金の動向は?
2025年11月21日に「総合経済対策」が閣議決定されました。
人手不足・物価高・エネルギー高騰が続く中で、中小企業支援が大きく位置づけられた点が今回の特徴です。賃上げを可能にする環境整備、省力化投資の促進、事業承継・M&A支援、GX・省エネ対応など、2026年度の予算や補助金制度に直結する内容が多数盛り込まれています。
本コラムでは、2025年総合経済対策のポイントをわかりやすく整理しつつ、今後活用が見込まれる主要補助金の方向性を解説します。
制度の全貌を把握しておくことで、来年度の事業計画づくりや投資判断に役立つ内容となっています。
今回の総合経済対策の全体像
今回の総合経済対策は、以下の5つが中小企業に特に影響する柱です。
- 持続的な賃上げを支える環境整備
- 省力化・自動化等の生産性向上投資
- 事業承継・M&Aの加速
- 物価高・エネルギー価格高騰への対応
- 成長投資(GX、DX、スタートアップ)
政府は「賃上げにつながる構造転換」を重視しており、単なる負担軽減ではなく、投資促進型の支援が前面に出ています。
「総合経済対策」とは?概算要求との違い
経済対策を理解するうえで、「総合経済対策」と「概算要求」の違いを押さえておくことが重要です。
どちらもニュースで取り上げられますが、役割は大きく異なります。
総合経済対策(今回11/21閣議決定)
政府が「今後1年間はこの方向性で政策を進める」と決めた政策パッケージのことです。中小企業支援や補助金制度の重点分野がここで明確になります。
ただし、この段階では予算は確定していません。(法的拘束力なし)
概算要求(毎年8月)
各省庁が「来年度はこれだけ予算が必要です」と財務省に提出する予算の希望書のことです。補助金の予算規模や新制度の提案が盛り込まれています。
まだ政府案ではありません。
この違いを踏まえると、今回の総合経済対策は、2026年度の補助金や税制改正の「優先テーマ」を示す指標であり、事業者にとっては来年度の投資計画や補助金活用の方向性を考えるうえで非常に重要な資料となります。
予算を決める1年間の流れ
① 8月:概算要求
→ 各省が「来年度これだけ予算が必要です」と財務省へ要求
→ まだ政府案でも予算でもない
② 11〜12月:総合経済対策(※今回)
→ 政府が「来年度はこの政策を特に優先する」と決定
→ 各省の要求(概算要求)を踏まえて政策方針を整理
→ ただし予算額は決まらない(方向性だけ決まる)
③ 12月:政府予算案の決定
→ 財務省が概算要求を査定
→ 総合経済対策で決めた重点分野に予算を再配分
→ ここで初めて補助金・施策の予算額がほぼ決まる
④ 翌年(2026年)1〜3月:国会での審議・成立
⑤ 4月以降:補助金の公募開始(順次)
概算要求の参考コラム
中小企業補助金はどう変わる?概算要求から見える来年度の方向性
中小企業向け5つの重点支援分野
① 賃上げ環境整備
2026年に向けて、中小企業の賃上げを可能にするための支援が拡充されました。
特に、賃上げと省力化投資を組み合わせた取り組みが政策的に重視されています。
② 省力化投資・生産性向上
人手不足が深刻化する中、AIやロボット、自動化設備などの導入支援が拡充されました。
バックオフィスのDXやクラウド化も促進対象です。
③ 事業承継・M&A支援
後継者不足は2025年時点でも深刻な課題であり、事業承継・引継ぎ支援の強化が明記されました。
M&Aを契機に設備更新や新事業展開を行う企業向けの支援も広がります。
④ エネルギー・物価高対策
エネルギー価格の高止まりを受け、中小企業の負担軽減策や、省エネ設備導入支援が継続されます。
2025年の夏・冬の電力逼迫に対する対策も重視されています。
⑤ 成長投資(GX・DX・スタートアップ)
AI、GX、ロボティクスなどの先端分野は2025年も重点分野として明記されました。
地方企業の成長支援、大規模投資への税制措置の拡大も示されています。
2026年度補助金の方向性(2025年総合経済対策からの見通し)
総合経済対策の内容から、2026年度予算・補助金の方向性は次のように読み取れます。
- 賃上げ+省力化投資のセット審査がさらに強化される
- 省力化投資・GX投資には引き続き手厚い支援
- 事業承継支援は「専門家活用型」の利用が広がる可能性
- エネルギー価格対策は中小企業向けに継続の方向
次年度の補助金活用を見据える場合、「生産性向上」「エネルギー対策」「事業承継」の3テーマは間違いなく重要になります。
補助金参考コラム
中小企業省力化投資補助金(一般型)で業務効率化&生産性向上!
中小企業が今から準備すべきポイント
① 2026年に向けた投資テーマを整理する
自社の課題、賃上げ環境、デジタル化、人材不足などを踏まえて方向性を決めておくと、補助金申請がスムーズになります。
② 数値計画・現状分析を整える
審査で必須となる「現状 → 投資後の改善」の根拠となるデータを早めに整理しておくことが有効です。
③ 専門家・金融機関との連携を強化する
設備投資・事業承継・M&Aは、専門家と連携することで補助金の適用可否や制度選択が明確になります。
まとめ
2025年11月21日閣議決定の総合経済対策は、中小企業の賃上げ・省力化・事業承継・GX投資を強く後押しする内容です。
2026年度の主要補助金はこの政策方針に沿って編成される見通しであり、今から準備を進めることで自社の成長計画を大きく前進させることができます。

