2026年4月から何が変わる?中小企業・事業者が知っておきたい制度変更まとめ
2026年(令和8年)4月は、事業者にとって重要な制度変更が重なるタイミングです。特に設備投資に対する新たな税制優遇の創設や、インボイス制度の経過措置の見直しは、補助金申請や資金計画に直結するトピックです。
本コラムでは「補助金・投資減税」と「インボイス」を中心に解説し、税制改正・社会保険の変更点についても概要をご紹介します。今後の事業計画や節税対策の参考にお役立てください。
① 設備投資を後押しする新税制
令和8年度税制改正の目玉のひとつが、大規模な設備投資に対する新たな優遇措置「特定生産性向上設備等投資促進税制」の創設です。補助金と組み合わせることで、投資コストを大幅に削減できる可能性があります。
特定生産性向上設備等投資促進税制とは
産業競争力強化法の改正を前提として創設される制度で、青色申告法人が一定規模以上の「生産性向上に資する設備」を取得・事業供用した場合に、特別償却または税額控除を選択して適用できます。
| 項目 | 内容 |
| 適用期間 | 産業競争力強化法 改正法の施行日 〜 2029年3月31日 |
| 対象事業者 | 青色申告法人(中小企業・中堅企業・大企業を問わず対象) |
| 優遇措置① 特別償却 | 取得価額の100%を即時償却(初年度に全額費用計上可能) |
| 優遇措置② 税額控除 | 取得価額の7%を法人税額から直接控除 (建物・構築物は4%) ※上限:法人税額の20%。超過分は翌年度以降に繰越可 |
| 適用要件 | 経済産業大臣の認定を受けた計画に基づく設備投資であること (産業競争力強化法上の「特定事業適応計画」等が前提) |
| 他制度との関係 | 中小企業経営強化税制・中小企業投資促進税制等との重複適用は不可 →どの税制を選択するか、事前の比較検討が重要 |
特別償却 vs 税額控除 — どちらを選ぶべき?
特別償却と税額控除はどちらか一方を選択します。自社の税務状況に応じて最適な選択肢が異なります。
| 特別償却(即時100%) | 税額控除(7% or 4%) | |
| メリット | 初年度に全額費用計上→ 当期利益を大きく圧縮 | 法人税から直接差し引き→ 確実な節税効果 |
| 向いている ケース | 今期の利益が大きく 納税額を抑えたい場合 | 赤字・低利益でも 控除額を繰り越せる場合 |
| 上限 | なし(全額OK) | 法人税額の20% (超過分は繰越可) |
判断のポイント
- 今期の課税所得が大きい → 特別償却で利益を圧縮するほうが有効なケースが多い
- 赤字・繰越欠損金がある → 税額控除を選び、控除枠を翌年以降に繰り越す方法も
- どちらが有利かは設備の種類・取得価額・税率によって異なるため、税理士への相談を推奨します。
こちらのコラムでは、即時償却と税額控除どちらを選ぶべきかなど、シミュレーション例を交え詳しく解説しています。
対象となる設備の目安
対象設備の具体的な認定基準は産業競争力強化法の改正内容によりますが、従来の類似税制の例から以下のような設備が対象となる見込みです。
| 項目 | 内容 |
| 機械・装置 | 1台あたり160万円以上 |
| 工具・器具備品 | 1台あたり120万円以上 |
| 建物・建物附属設備 | 1棟あたり1,000万円以上 |
| ソフトウェア | 一の取得価額が70万円以上(または合計70万円以上) |
| 注意 | 上記はあくまで目安です。認定計画の内容・設備の用途により判断が変わります |
補助金との組み合わせ
- 設備投資を行う場合、補助金(ものづくり補助金・省力化補助金等)と本税制の併用が可能なケースがあります。
- ただし補助金収入は原則として課税対象となるため、圧縮記帳の活用や税負担も含めたシミュレーションが重要です。
- 補助金申請のタイミングと設備取得のスケジュールを早めに整理しておきましょう。
② 賃上げ促進税制の見直し
賃上げ促進税制は2026年4月より大きく再編されます。大企業向けの措置が廃止となる一方、中小企業・中堅企業向けは継続されます。
大企業向け措置の廃止
大企業(資本金10億円以上かつ従業員1,000人超等)を対象とした賃上げ促進税制は、適用期限前の2026年3月31日をもって廃止となります。2026年4月以降に開始する事業年度からは適用できません。
【注意】 適用期限前の廃止です。2026年3月期(3月決算法人の場合)が最後の適用機会となります。見落としのないよう確認してください。
中堅・中小企業向けの継続と要件変更
| 項目 | 内容 |
| 中堅企業 (従業員2,000人以下) | 【継続・要件厳格化】 ・基本控除率10%:賃上げ率4%以上(従来3%以上) ・上乗せ:5%以上で+5%、6%以上で+15%(最大控除率30%) ・マルチステークホルダー方針の公表が必要 |
| 中小企業 (資本金1億円以下等) | 【継続】 ・基本控除率15%:賃上げ率1.5%以上 ・上乗せ:2.5%以上で+15%(最大控除率40%) ・教育訓練費上乗せ措置は廃止 |
| 共通の注意点 | 給与等支給額が前年比増加していることが前提条件 黒字であること(法人税が発生していること)も実質的な要件 |
賃上げを検討している中小・中堅企業にとっては、補助金による設備投資と賃上げ促進税制を組み合わせることで、複合的なコスト削減が期待できます。
③ インボイス制度の経過措置の見直し
インボイス制度(適格請求書等保存方式)は2023年10月に開始されましたが、小規模事業者の負担を和らげるための経過措置が複数設けられています。2026年度の税制改正では、既存の経過措置の見直しと新たな特例の創設が行われます。
2割特例の終了(2026年9月30日)
免税事業者がインボイス発行事業者に登録した場合に適用できる「2割特例」は、2026年9月30日の課税期間をもって終了します。
| 項目 | 内容 |
| 2割特例とは | インボイス登録した小規模事業者が、納付消費税額を 「売上消費税額の20%(2割)」に抑えられる特例 |
| 適用できる期間 | 2023年10月1日〜2026年9月30日の属する課税期間 |
| 終了後の影響 | 本則課税または簡易課税に移行が必要 → 実質的な納税額が増加するケースが多い |
| 個人事業者の場合 | 2割特例は2026年分(1月〜12月)が最後の適用年 2027年分からは通常の計算方法に切り替わる |
今すぐ確認すること
- 現在2割特例を使っている方:2026年10月以降の消費税負担額を試算しましょう
- 簡易課税への変更を検討する場合:課税期間の前日までに「簡易課税制度選択届出書」の提出が必要です
- 届出の期限を逃すと1年間は変更できません。早めの準備を。
3割特例の創設(2027〜2028年)
2割特例終了後の小規模個人事業者の負担激増を防ぐため、新たに「3割特例」が創設されます。
| 項目 | 内容 |
| 正式名称 | (仮称)小規模事業者に係る税額控除特例 |
| 対象 | 個人事業者のみ(法人は対象外) |
| 適用期間 | 2027年・2028年の各課税期間(2年間) |
| 内容 | 納付消費税額を「売上消費税額の30%(3割)」に抑えることができる |
| 2割特例との違い | 2割特例:納付額=売上消費税×20% 3割特例:納付額=売上消費税×30% → 負担は増えるが急激な増加を緩和する措置 |
| その後(2029年〜) | 3割特例も終了。本則課税か簡易課税かを選択した通常の申告へ |
経過措置のロードマップ
現行・今後の経過措置を時系列で整理すると以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
| 〜2026年9月 | 2割特例が利用可能(売上消費税の80%を控除) |
| 2027年1月〜 2028年12月 | 3割特例に移行(個人事業者のみ。売上消費税の70%を控除) |
| 2029年1月〜 | 経過措置終了。本則課税 or 簡易課税で通常申告 |
簡易課税との比較
- 簡易課税のみなし仕入率は業種によって40〜90%。
- 卸売業(90%)・小売業(80%)・サービス業(50%)等、業種によっては3割特例より簡易課税の方が有利な場合があります。
- どちらが有利かは業種・売上規模によって異なるため、2026年中に税理士と試算しておくことをおすすめします。
免税事業者との取引に関する経過措置
仕入先が免税事業者の場合、買い手側(課税事業者)はインボイスを受け取れないため、仕入税額控除が原則できません。ただし経過措置として、一定割合の控除が認められています。
| 項目 | 内容 |
| 2023年10月〜2026年9月 | 免税事業者からの仕入れの80%を控除可(8割特例) |
| 2026年10月〜2029年9月 | 免税事業者からの仕入れの50%を控除可(5割特例) |
| 2029年10月〜 | 控除不可(0%) |
2026年10月以降、免税事業者との取引コストが実質的に増加します。仕入先のインボイス登録状況を確認し、取引条件の見直しや価格交渉を検討しておきましょう。
④ その他の税制改正(概要)
以下は税務・給与の専門家(税理士・社労士)への確認をおすすめする項目です。概要のみご紹介します。
| 項目 | 内容 |
| 課税最低限の引き上げ (年収の壁見直し) | 2026年分の所得税から、基礎控除と給与所得控除の合計による課税最低限が160万円→178万円に引き上げ。パート・アルバイトの就業調整に影響する可能性があります。 |
| 食事手当の非課税枠拡充 | 月額3,500円→7,500円に引き上げ。福利厚生の見直しに活用できます。 |
| 研究開発税制の強化 | AI・量子等の先端分野向けに控除率が最大40%に強化(2027年度〜)。繰越控除期間も延長。 |
| 防衛特別所得税 | 2027年分から所得税に1%上乗せ(同時に復興特別所得税を1%引き下げのため当面の負担増は限定的)。 |
⑤ 社会保険・賃上げ関連(概要)
社会保険・労働関連の変更は給与計算や雇用管理に影響します。詳細は社会保険労務士にご相談ください。
| 項目 | 内容 |
| 子ども・子育て支援金 (2026年5月〜) | 医療保険加入者全員から徴収開始。労使合計で約0.23%(2028年度に約0.4%まで段階的引上げ)。給与計算システムの設定変更が必要です。 |
| 在職老齢年金の改正 (2026年4月〜) | 年金が減額される基準額が51万円→62万円に引き上げ。高齢者の就労促進が期待されます。 |
| 被扶養者認定基準の変更 (2026年4月〜) | 労働契約書に記載された年収見込みで判定する方式に変更。労働条件通知書の整備が必要です。 |
| 社会保険の適用拡大 (2026年10月〜見込み) | 賃金要件(月額8.8万円)の撤廃が見込まれており、パート・アルバイトの加入範囲が拡大する見通しです。 |
まとめ
2026年4月前後は、事業者にとって制度変更の多いタイミングです。特に以下の点は早めの対応が重要です。
【早めに対応すべき3つのポイント】
- 【設備投資】特定生産性向上設備等投資促進税制の対象要件・申請スケジュールの確認(産業競争力強化法の改正動向を注視)
- 【インボイス】2割特例の終了(2026年9月末)に備えた消費税計算方法の見直し。簡易課税への変更を検討する場合は届出期限に注意
- 【賃上げ税制】大企業は2026年3月末が最後の適用機会。中小・中堅企業は賃上げ率の要件変更を確認
制度の詳細や自社への影響については、行政書士・税理士・社会保険労務士など専門家にご相談いただくことをおすすめします。当社でも補助金申請のサポートを行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
関連コラム
【2026年度税制改正】設備投資促進減税案を徹底解説|7%税額控除・即時償却・対象要件・必要な手続きまで
インボイス制度の経過措置はどう変わる?2026年度税制改正で示された段階的見直しを解説


