東証グロース市場が変わる?──「5年以内に時価総額100億円以上」が求められる時代へ──上場維持基準の見直しでどうなる?
東証グロース市場、上場維持基準の見直しへ
東京証券取引所は、2025年春に開催された有識者会議において、グロース市場の上場維持基準の見直しに本格的に着手しました。
その中でも最も注目されているのが、次の新たな基準案です。
上場から5年以内に、時価総額100億円以上(2030年を目処)
ー 東洋経済・Yahoo!ニュース報道より
この変更が意味するのは、上場するための基準自体は据え置かれる一方で、上場後に維持するためのハードルが大きく上がるということです。
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上場基準どう変わる?――10年で40億円から「5年で100億円」時代へ
上場基準はそのまま、維持基準が大きく引き上げへ
現在の制度では、グロース市場に上場した企業は、上場後10年経過時点で時価総額が40億円以上あれば、上場維持が可能とされています。
つまり、収益が赤字でも、売上が小さくても、将来的な成長性さえあれば上場が認められ、その後10年間でじっくり成長していく余地がありました。
しかし、新たな基準では、「上場後5年以内に時価総額100億円以上」という数値が明示されようとしています。
これは、成長のスピードと市場からの評価(=時価総額)を同時に求める、非常にチャレンジングな基準です。
上場した後にきちんと市場から評価され、投資家から資金が集まるような企業でなければ、グロース市場にとどまり続けることが難しくなるということになります。
なぜ制度が変わるのか?――上場維持基準の見直し
現行制度が、「上場がゴール化してしまう」「10年経っても成長していない企業が多い」といった批判の声を受け、東証は制度の見直しに動き出しています。
グロース市場は当初、「成長企業向けの柔軟な上場市場」として設計されましたが、実際には
- 長期にわたり赤字が続く企業の増加
- 投資家保護・信頼性の観点での懸念
- 成長性の見極めが困難な銘柄の増加
といった課題が指摘されており、東証は「成長企業の登竜門」としての信頼性回復を目指しています。
このような基準の引き上げは、成長力のある企業をグロース市場に集め、投資家にとって魅力ある市場にするためのものですが、その一方で、今までグロース市場で上場を目指していた多くのスタートアップや中堅企業にとっては、非常に高いハードルとなる可能性があります。
制度が変わるとどうなるか――上場維持基準の見直し
現在すでにグロース市場に上場している企業の多くがこの新基準を満たしていないと見られており、もしこの変更が実施されれば、相当数の企業が市場からの退場や、他市場への移行を迫られることになります。
実際、現在のグロース上場企業のうち、「時価総額100億円以上」を満たしているのは約30%に過ぎないというデータもあります。裏を返せば、残りの約70%が新基準の下では維持基準を満たさなくなる可能性があるということです。
新基準の影響を受ける企業とは?――上場維持基準の見直し
制度変更が実施された場合、影響を受けるのは以下のような企業です。
これからグロース市場を目指す企業
上場後5年以内に時価総額100億円を目指せるだけのスケーラビリティ(成長余地)と、市場から評価される明確なビジネスモデルが求められます。
すでにグロース市場に上場しているが、時価総額が低迷している企業
上場維持が困難となるリスクがあり、海外上場や市場変更(スタンダード移行)を検討する企業も出てきています。
企業の選択肢は?――上場維持基準の見直し
こうした背景から、上場を目指す企業には「国内グロース市場だけを前提としない選択肢」も必要になってきています。
たとえば、
- 東証スタンダード市場への移行
- 海外市場(シンガポールなど)での上場
- グロースではなくM&Aや資本提携による成長
など、自社に合った「資金調達と成長の道筋」を見直す機会ともいえるでしょう。
麹町キャピタルマネジメント株式会社では、日本のスタートアップおよびすでに東証に上場している企業を対象に、シンガポール証券取引所(SGX)への上場支援を行っております
こちらのコラムをご覧ください。
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