令和8年度概算要求から読む ― 海外展開支援とグローバルサウス戦略

経済産業省が毎年8月末に公表する「概算要求」は、翌年度予算の予告編のようなものです。
制度名が直接書かれているわけではなく、政策目的ごとの箱に金額が割り当てられています。
したがって、具体的な補助金額を知ることはできませんが、「どの分野に重点が置かれるのか」をいち早くつかむことができます。

以前のコラムで詳しく解説しています。

中小企業補助金はどう変わる?概算要求から見える来年度の方向性―大規模投資補助金はどうなる?

今回は、海外展開支援とグローバルサウス戦略に焦点を当てて解説します。

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海外展開関連で注目すべき4つの枠

今回の令和8年度概算要求では、海外展開・国際連携に関する事業が複数並びました。とくに注目したいのは次の4つです。

グローバルサウス未来志向型共創等事業:32億円(新規)

新興国や同志国との経済連携を強化し、国際ルール形成を後押しする枠。

実は令和6年度補正で約1,500億円が既に計上されており、当初予算で常設化する流れです。

補正で大型資金 → 当初で制度維持という二段構えの構造です。

国際ルール形成・市場創造型標準化推進:24億円

国際規格や標準の策定に日本企業が参画するための支援。

ESG・GX・データ規制など、輸出や上場企業に直結するテーマです。

新興国との共創・技術協力関連:38億円(新規)

人材交流や共同研究を促進し、現地との共創体制をつくる取り組み。

JETRO運営費交付金(302億円の内数)

輸出支援や投資促進の基盤。海外での実証や販路開拓を支えるプラットフォーム。

今後のプログラム展開により、現地事業開発・販路拡大の足場となります。

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海外展開支援:前年との比較で見えてくる傾向は?

「新規」が多いのはなぜ?

今年の資料では、グローバルサウス未来志向型共創等事業(32億円)や新興国との共創・技術協力(38億円)などが「新規」とされています。

これは「完全にゼロから始まった」というより、従来の海外展開支援の枠を組み替えて、新しい名前・目的で箱を作り直したという意味合いが強いです。

実際には、令和6年度補正で既に 約1,500億円規模の関連予算が確保されており、それをベースに当初予算で常設化していく流れです。

前年まで散発的に補正で対応していた海外展開支援を、令和8年度からは「常設化・体系化」しようとしている、これが一番の変化です。

「金額規模」よりも「枠の拡充」がポイント

前年度は「標準化」「海外展開支援」といった箱はあっても、ここまで明確に「グローバルサウス」「同志国」といったキーワードは出てきませんでした。令和8年度は、外交・国際ルールメイキングと直結する形で新しい箱を立ち上げ、かつJETRO(302億円の基盤)と組み合わせる構造になっています。

つまり、額の増減を追うより、「支援対象の範囲が広がった」ことが重要です。
これにより、日本企業が「単なる輸出」ではなく「国際ルールづくり・規格づくり」に参加する余地が広がりました。

海外展開・上場を目指す企業にとって

海外展開を目指す企業にとっては、単に財務状況が良ければ良いというわけではなく、国際的なルールに適合していることが必須条件になります。
たとえば、

  • 情報開示:財務諸表や経営リスクを国際基準で公開すること
  • サイバーセキュリティ:海外投資家が安心して取引できるだけのセキュリティ水準を満たすこと
  • ESG(環境・社会・ガバナンス):持続可能性やガバナンス体制を整えていること

これらはすべて、経産省の「国際ルール形成・標準化推進」事業と直結しています
つまり、企業が補助金や支援を使って「国際標準に沿った経営体制」を整えれば、どの国の市場にも対応できる汎用スキルになります。

JETRO支援を活用すれば、現地販路開拓や投資家との接点形成に直結します。

経産省の「国際ルール形成・標準化推進」や「グローバルサウス共創」事業は、特定国に限定されず、「海外展開全般に対応する力」をつけるための支援です。

したがって、SGX上場支援に限らず、アジア市場への進出、欧州規格対応、米国IPOなどにも応用できます。

シンガポール市場上場についてはこちらのコラムをご覧ください。

▶ シンガポール市場上場という新たな選択肢― 東証上場企業・上場準備企業のための海外展開支援 ―

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まとめ

令和8年度概算要求から見える海外展開支援は、「グローバルサウス × 標準化 × JETRO」が三本柱です。

金額規模だけでなく、外交・規格・人材・販路を束ねた支援が進むことで、海外展開を狙う企業にとってはより多面的な支援のチャンスが広がります。

来年以降に海外進出を考える事業者は、補助金や支援制度の情報を早めにキャッチアップし、国際ルールや標準化の視点を盛り込んだ戦略設計を準備しておくことが重要です。

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