「成長戦略本部」設置で変わる?重点投資が補助金政策に与える影響
11月4日、政府が「日本成長戦略本部」を設置します。(2025/11/4 讀賣新聞より)
AI・半導体、防衛産業、造船など17の分野を「重点投資対象」とし、複数年度で官民投資を進めるというものです。
この動きは来年度以降の中小企業向け補助金にも影響を与えます。
実は、補助金のテーマや採択方針は、こうした「国の成長戦略」の延長線上に設定されているためです。
今回は、
- 概算要求で予算はすでに決まっているのか
- 成長戦略本部の重点投資が補助金にどう関係するのか
- 中小企業が今から意識しておくべきポイント
について解説します。
概算要求とは?もう予算は決まっているのか
「概算要求」とは、各省庁が翌年度に必要な予算を財務省へ要望する段階のことです。
毎年8月末までに提出され、その後、財務省による査定・調整を経て、12月下旬に政府としての「予算案」が固まります。
「中小企業補助金はどう変わる?概算要求から見える来年度の方向性」で解説しています。
つまり、11月時点ではまだ「最終決定」ではありません。
ここから、首相官邸や関係閣僚による政治判断で、重点政策が追加されたり、予算配分が上積みされたりする可能性があります。
今回の「日本成長戦略本部」の設置は、まさにこのタイミングで打ち出された新たな政策方針です。
国として「どの分野に投資するか」を改めて示すことで、概算要求後でも補正予算や特別枠の形で反映される余地が生まれます。
成長戦略本部の設置と「重点投資17分野」
首相を本部長とする「日本成長戦略本部」は、「バラマキでなく戦略的な財政出動」を掲げ、日本経済の供給構造を強化することを目的としています。
今回の特徴は、17の戦略分野を明示的に設定し、担当閣僚ごとに複数年度での「官民投資ロードマップ」を策定させる点です。
主な対象には、以下のような分野が含まれています。
- 人工知能(AI)・半導体
- デジタル・サイバーセキュリティ
- 防衛産業・造船
- 核融合エネルギー
- スタートアップ・人材育成
いずれも「成長投資」や「危機管理投資」というキーワードで括られ、
国としての長期的な投資対象とされています。
単年度の補助金というよりも、中期的な産業育成投資への転換が意識されており、
民間の研究開発・設備投資・人材育成を継続的に支援する流れが強まりそうです。
「日本成長戦略本部」で戦略分野に位置付ける見通しとなった17項目
- 人工知能(AI)・半導体
- 造船
- 量子
- 合成生物学・バイオ
- 航空・宇宙
- デジタル・サイバーセキュリティ
- コンテンツ(アニメ、ゲームなどの産業)
- フードテック(先端技術による食品などの開発)
- 資源・エネルギー安全保障・GX(グリーントランスフォーメーション)
- 防災・国土強靭化
- 創薬・先端医療
- フュージョンエネルギー(核融合)
- マテリアル(重要鉱物・部素材)
- 湾岸ロジスティクス(物流)
- 防衛産業
- 情報通信
- 海洋
補助金への影響と今後の方向性
今回の重点投資が補助金制度にどう反映されるのか、現時点ではまだ具体的な制度設計までは明らかになっていません。
しかし、過去の傾向から見ても、国の成長戦略で掲げられた分野は、数か月後の補助金テーマに反映されやすい傾向があります。
| 分野 | 想定される関連補助金 | 傾向・キーワード |
|---|---|---|
| AI・半導体 | ものづくり補助金、省力化投資補助金 | DX・自動化・AI導入 |
| 防衛・造船 | サプライチェーン補助金、産業強靭化支援 | 安全保障・国産化 |
| エネルギー・核融合 | GX投資補助金、カーボンニュートラル促進 | 脱炭素・再エネ |
| サイバーセキュリティ | 中小企業デジタル化支援 | 情報防衛・セキュリティ投資 |
| 人材・スタートアップ | 新事業進出補助金、創業支援 | 新事業創出・人材確保 |
補助金の方向性は「技術トレンド」よりも「政策キーワード」に連動します。
国が「重点分野」として掲げるテーマに自社の取組がどう関わるのかを整理しておくことで、事業計画の立て方やアピールポイントが明確になります。
今後の動きをどう見ておくか
今の段階では、まずは国の成長戦略と補助金テーマの関係を意識しておくことが大切です。
特に、来年度の「ものづくり補助金」や「省力化投資補助金」などは、こうした重点投資方針を踏まえた改定・再設計が行われる可能性があります。
例えば、以下のテーマが強調される可能性が高いでしょう。
- AIや省人化に関連する投資
- GX(脱炭素)や安全保障を意識した取り組み
- スタートアップ支援や人材確保を促す取組
まとめ
概算要求で予算の骨格は固まりつつありますが、「成長戦略本部」による重点投資方針によって、来年度の補助金制度はさらに再編・強化されていく可能性があります。
国の方針を早めにキャッチし、自社の取組との接点を意識することが、補助金活用の第一歩になります。
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