シンガポール市場に熱視線 ― 小型・中型株を核に動き出した本格的市場活性化策
近年、上場企業数や取引量の減少が続いていたシンガポール証券取引所(SGX)に、再び活気が戻りつつあります。きっかけは、シンガポール金融管理局(MAS)が主導する本格的な市場活性化施策「Equity Market Development Programme(EQDP)」の始動です。
SGX上場を検討する企業にとって大きなチャンスであるこの「Equity Market Development Programme(EQDP)」第一弾について、詳しく解説します。
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シンガポール金融当局(MAS)、EQDP第一弾の資金運用先を正式に発表
2025年7月21日、シンガポール金融管理局(MAS)は、総額S$5 billion(約5,000億円)規模の株式市場改革プログラム Equity Market Development Programme(EQDP) の第一弾として、Avanda Investment Management、Fullerton Fund Management、JPモルガン・アセット・マネジメントの3社にS$1.1 billion(約856百万米ドル)を委託することを発表しました。
総額S$5 billion(約5,000億円)規模の株式市場改革プログラム Equity Market Development Programme(EQDP)についてはこちらをご覧ください。
シンガポール政府の Equity Market Development Programme(EQDP)徹底解説
この選定は、小型・中型株(SMIDキャップ銘柄)への資金配分を重視したものであり、流動性改善と価格発見の強化を狙ったものです。MASは、100社を超える運用会社から応募があったと明かし、資金誘導力と戦略の整合性を評価したうえでの決定でした。
この動きは、EQDP全体で想定されているS$5 billion(約5,000 億円)の資金規模のうち、第1フェーズの一部にすぎません。MASは今後も段階的に資金を投入し、2025年第4四半期までに追加の運用先選定を進めていく計画です。
狙いは「地元発の成長企業」への厚い支援
今回のEQDPが注目される理由の一つは、その投資対象の明確な絞り込みにあります。対象となるのは、SGXに上場する小型・中型株(Small and Mid-Cap Stocks)。つまり、グローバル大企業ではなく、これからの成長が期待される、地元企業を中心としたセグメントです。
たとえば、Avandaは今回、以下のようなテーマに即した新しいファンドを立ち上げる予定です。
- 企業価値の向上が見込まれる企業(バリューアップ)
- 地域に根ざした優良企業(ローカルチャンピオン)
- 再建途上で将来性のある企業(ターンアラウンド)
いずれも短期的な株価変動を追うのではなく、中長期での企業成長にコミットする構成となっており、ESG(環境・社会・ガバナンス)、フィンテック、デジタルインフラといった国家戦略と合致する分野への投資も強く意識されています。
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これが意味する市場の変化とは?
このEQDPによる初期投資は、ただの資本注入ではなく、市場構造そのものの再生を目的とする試みです。Avanda、Fullerton、JPモルガンに託された資金は、指標では拾われにくい中小型株にまで拡大されることで、市場全体の流動性と見通しの形成を促します。
さらに、MASはGEMS(Grant for Equity Market Singapore)への拡充を通じ、株式研究・IR支援、ETFやSDRの上場補助にも取り組むことを宣言し、研究や情報発信の機会拡大を視野に入れています。研究助成金の上限額はS$6,000、上場報酬額も拡大され、深掘り調査や上場支援に資源が割かれる構造です。
投資家・上場企業にとっての大きなチャンス
制度が始動したばかりで、資金はあるものの流動性・投資先が未成熟な段階にある今こそ、SGX上場を検討する企業にとっては「割安・高成長企業として早期に注目される可能性」が高いタイミングです。
この資金導入の第一段階が大きなフォーカスを集めることで、市場動向への注目も高まり、IR・投資家との対話もしやすくなる環境が整いつつあります。
関連引用リンク
MASがEQDP第一弾として3社にS$1.1 billionを委託し、流動性と価格発見の強化を狙う旨
▶https://www.mas.gov.sg/news/media-releases/2025/mas-appoints-first-batch-of-eqdp-asset-managers?
資金受託先選定にあたっては、「戦略の整合性」および「第三者資本の呼び込み力」が重視され、100社以上が関心を示した点
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