なぜ国は中小企業に補助金を出すのか?政策の背景と支援の意味をわかりやすく解説
主要の補助金は、ほとんどが中小企業を対象にしたものです。
これはなぜなのでしょう?
・国はなぜ中小企業に補助金を出すの?
・中小企業基本法の理念から補助金制度をみる
・補助金制度に公平性はある?

国はなぜ中小企業に補助金を出すの?
補助金制度というと、「一部の企業だけが優遇されているのでは?」といった疑問を持たれる方もいるかもしれません。
しかし、国が中小企業に補助金を出す背景には、日本経済全体に関わる重要な政策的意図があります。
本記事では、その政策的背景を、中小企業基本法や中小企業白書などの内容をもとにわかりやすく解説します。
中小企業は日本経済の“屋台骨”
中小企業庁によれば、日本国内の企業のうち99.7%が中小企業であり、全就業者の約7割、全付加価値の5割超を中小企業が担っています。
つまり、中小企業の活力なくして、日本経済の活力は成り立たないと言っても過言ではありません。
中小企業基本法の理念
1963年に制定された「中小企業基本法」では、中小企業の役割として以下のような点が強調されています:
- 雇用の受け皿として地域経済の安定に貢献
- 地域社会に密着したサービス提供
- 柔軟な経営とイノベーションの担い手
しかし一方で、中小企業は資金力や情報量、人材確保といった面で大企業より不利な立場にあることも明記されています。
そのため、国は「市場の機能だけでは解消できない構造的な格差」を是正するため、補助金という形で支援策を講じることが正当化されているのです。
補助金の目的は“公平性”ではなく“政策実現”
補助金は「公平に配られるお金」ではありません。
あくまで、政府が描く政策目標(例:生産性向上・賃上げなど)を実現するための“選択的投資”です。
補助金制度はそれぞれに目的があります。
以下の表の通りです。
政策課題 | 補助金制度 | 目的・支援内容 |
---|---|---|
生産性向上・高付加価値化 | ものづくり補助金 | 革新的な製品・サービスの開発や設備投資を通じた付加価値向上を支援 |
事業の多角化・新分野進出 | 新事業進出補助金 | 既存事業とは異なる新市場・新事業への進出を支援し、成長機会を創出する |
人手不足対応・業務効率化 | 中小企業省力化補助金 | IoTや自動化機器等の導入により、人手不足を補い、生産性を向上させる |
急成長分野への集中支援 | 成長加速化補助金 | 社会課題の解決や成長分野(GX・DX等)に挑む中小企業への戦略的支援。申請には100億宣言が必須 |
地域の雇用創出・大規模投資促進 | 大規模成長投資補助金 | 地域における1億円超の設備投資に対し、賃上げや雇用拡大などを条件に大型支援を行う |
事業承継・地域事業維持 | 事業承継・M&A補助金 | 後継者不在問題に対応し、円滑な事業引継ぎやM&Aによる地域企業の存続・発展を支援 |
地域密着・小規模企業の基盤強化 | 小規模事業者持続化補助金 | 小規模事業者の販路開拓・集客強化など、地道な取り組みを支援し、地域経済の足腰を支える |
地域資源活用・地方創生 | ローカル10,000プロジェクト | 地方の特色を活かした事業(観光・農業・文化等)を対象に、地域課題の解決と雇用創出を同時に支援 |
それぞれの補助金についてはこちらをご覧ください。
補助金は“公的なベンチャーキャピタル”的側面も
民間の金融機関では、「新規事業」や「成長投資」に対してリスクを取って資金を出しづらいケースもあります。
補助金は、事業の可能性に対して“先行して”資金を投入する政策的ベンチャーキャピタルとも言えます。
経営革新・事業転換・イノベーション創出といったテーマが中心で、ただの赤字補填や経営維持を目的とした支援ではない点に注意が必要です。
まとめ
中小企業向け補助金は、「お金を配るための制度」ではなく、“政策実現の手段”としての戦略的な支援策です。
- 日本の企業のほとんどが中小企業であり、支援は国家的課題
- 市場の限界を補完するために、補助金制度が存在する
- 支援は「選ばれた企業」が「社会的に求められる挑戦」を行うためのもの
- 中小企業も“受け身”ではなく、戦略的に補助金を活用する姿勢が求められる